764: ◆OX0aJKbZO.0H[saga]
2024/06/30(日) 23:47:58.64 ID:1nrOjH1Z0
マンティ「――――」
和室に置かれたテレビにはレースが流れています。先頭を往くのは銀色の髪をなびかせ、思うがままに逃げるウマ娘。それを追うのは栗毛のウマ娘と芦毛のウマ娘。
――叫び声と共にゴールした逃げウマ娘が、ゆっくりとスピードを落としながら息を整える。そして何度も聞いた口調で観客席に――。
マントレ「……どうですか。イメージは付きましたか?」
マンティ「ふぇぇ!?あ、と、とれーなーしゃん!?お、おつかれさまです!?」
マントレ「ほらほら落ち着いてください。今冷たいお茶を入れますから」
和室の奥からとれーなーしゃん……ち、違います!トレーナーさんがにこにこと笑いながら、お茶の準備をしてこちらに向かってきます。
……冷たい。美味しいです。
マントレ「今日は一段と暑いですから、熱中症には気を付けませんと。ゆっくり飲んでくださいね、お茶菓子に羊羹もありますよ」
マンティ「あ、ありがとうございます……」
――この和室は私のトレーナーさんのトレーナー室です。ちょっと学校とか寮からは離れた場所にあって、なんだか……そう。雰囲気のある所に、このトレーナー室はあります。
ちりんちりんと風鈴が鳴って、風情を感じます?その辺は、まだまだ分からないことばかりですけど……落ち着く場所で、気に入っています。
マントレ「――エルムステークス、標的は勿論シルヴァーパピヨンさんですか」
マンティ「は、はい。それ以外にも沢山……ユニコーンステークスも、全日本ジュニア優駿も。た、沢山、見ました」
パピヨンさんだけじゃありません、それ以外の出走者の今までのレースも何度も何度も繰り返しリピート。その走りを頭に刻みつける行為。目を瞑るだけで、その走りがイメージできるように、ただひたすらに観察をしました。
マントレ「貴女には実力がある、しかし中々差し切れない。それは単に――他を知らなかった為です」
他の走者の走りを知れば、どのような動きをしてくるかが分かる。どのタイミングでスパートをかけるか、仕掛けてくるかが分かる。勿論それは完璧じゃないし、当然トレーニングによって強くもなっている。
マントレ「獲物を知れば狩りやすくなります。ですから、しっかりと頭に刻み付けて――自信にしましょう。自分はこの自慢の末脚で絶対に刈り取れる――ハッキリとそう思えれば、もう貴女の独壇場です」
マンティ「ふぁ、ふぁぃ……が、がんばり、ます!」
ええ、その意気ですよ。と、優しく私のトレーナーさんは微笑んでくれました。背丈は私と同じ……いえ、ちょっと小さいくらい?なのに、まるでおじいちゃんみたいな安心感を与えてくれます。
……何歳なんでしょうか?
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