5:名無しNIPPER[saga]
2024/02/24(土) 17:59:55.60 ID:m27i/Y6WO
「おい。そこのあんた。あんただよおい。おーーい」
どこからともなく聞こえていた声が自分に向けられていることに気付き、口笛を中断して馬車を見上げる。
馬車から身を乗り出している商人は、ヒラヒラと手を振っていた。こちらも軽く会釈して答えておく。
「いくらなんでも上機嫌すぎだろ。ここまで大声出さないと気が付かないかね。…まあ、いいや。お前さんはコンスティアで何をする予定だい?入り用の物があれば安く売ってやろうと思ってな」
それはありがたいが、何故値引きしてくれるのだろうか。
気になったステラは問うも、あっけらかんとした様子で商人が答える。
「そりゃ、煉獄竜を仕留めた礼だよ。速攻で囮役になった上にキッチリ仕留めてくれたおかげで、こっちの商品の損害はゼロだ。出会した時は死ぬのだって覚悟してたんだから、これくらいするのは当たり前だろ?」
なるほど、得心がいった。であれば、利用しない手はない。
が、コンスティアに移住するにあたって何が必要になるか把握できていないので、ひとまず今は保留してもらうことにした。
「ほう、コンスティアに引っ越すのか。となると、商いにでも手を出すつもりかい?…いや、お前さんほどの実力者なら冒険者でもやっていけるか」
商人の最初の見立て通り、ステラは商売をしにここまで来た。とは言っても、商売に関するノウハウや大それた野望などといったものは何もない。
強いて商売を始める理由を言うなら、荼毘に付した親父たちの跡継ぎのため、と言うところか。
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