6:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 23:49:30.47 ID:/rP0od7IO
「エルサ! あたしよ、アナよ!」
ある日、アナが私の氷のお城にやってきた。
「うわぁ〜! エルサ、なんだか……変わったね。もちろん、良い意味で!」
こちらの機嫌を伺うアナ。もう怒ってない。
「気にしないで、謝る必要はないわ。だからもう帰って。私はここにいる……独りで」
「エルサ行かないで。ねえ、お願いよ。私から離れないで。生まれて初めて力になれる」
私は力になれない。生まれてから、ずっと。
「2人で山を下りようよ!」
山を降りたらまた街を氷漬けにしてしまう。
「1人だけ残して帰れない……」
「お願いよ。帰りなさい。太陽が輝く国へ」
「うん……でも……」
アナはあの温かな国で。私はこの氷の国で。
「いいの。ここでは独りだけど、自由に生きられるの。だから、もう私に近づかないで」
ここなら私は私でいられる。ありのままで。
「それは無理」
「なぜ無理なの?」
「ものすごい雪よ」
「なんのこと?」
きょとんとして問い返すと言いづらそうに。
「エルサの力で国中が雪と氷に包まれたの」
「国中が……?」
なんてこと。ああ、そんな。なんて、酷い。
「エルサなら元に戻せるでしょ?」
「いいえ、やりかたがわからない」
ああ酷いわ。悲しい。何もかも無駄だった。
無意味だった。私に出来ることは何もない。
危険なだけ。独りでここにいることすらも。
どこにも私の居場所なんてない。酷すぎる。
「アナ!?」
「うぅ……大丈夫、平気」
私の絶望が、波動となって、アナを襲った。
胸を押さえて、苦しそうに山を下りていく。
アナの心はゆっくりと冷たく凍ってしまう。
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