863: ◆15vHdNAAAEr/[sage saga]
2023/10/26(木) 23:31:30.80 ID:h/pand+io
透母「行方不明になってからこっち、なにを聞いても黙って俯いていたあの子がね、あなたの話をするの。口を開けば岸波さんがって」
透母「なんだかとってもイライラしているみたいで、誰かに感情をぶつけなきゃ気が済まないって感じだったなぁ」
桜野「え、あ、ああ……確かにあの頃はすっごい怒らせちゃってて……」
透母「でもね……本人は気づいてなかったと思うけど、あの時の透、なんだか楽しそうだった」
桜野「た、楽しそう……ですか?」
透母「うん。イライラはしてるんだけど、なんていうのかな……やんちゃな友だちの行動に呆れてるみたいな……」
桜野「あー……」
透母「思い当たる節ある?」
桜野「えーっと……へへ……」ポリポリ
透母「ふふっ……ともあれ、それからは毎日あなたのことを聞いた。その度にどこに腹が立ったか教えてくれた」
桜野「あは、は……」
透母「ずっと浮かない顔のあの子だったけど、あなたの話をしている時だけは元気だった。あなたを話をする度に、あの子が元気になっていくみたいだった」
透母「相変わらずイライラしてたみたいだけど、少しづつ口数も増えていってね、朱ちゃんや雪菜ちゃんの話もするようになって、ゆっくりだけど元気になっていって、それで……」
桜野「……」
透母「あの日……あの子、笑った。笑ったの」
桜野「…………はい」
透母「前みたいにひたすらのんきでやわらかい笑顔ってわけじゃなかったけど、それでも確かに笑ったの」
透母「笑って、笑いながら、桜野がねって言うの。嬉しそうにあなたの話をするの」
透母「今日は何があったって、今日の桜野ちゃんはこんなんだったよって。些細な、本当に小さなことを、これでもかってくらい幸せそうに話してくれるの……!」
桜野「……はい」
透母「……」
桜野「……」
透母「…………あなたが助けてくれたのよね」
桜野「え……?」
透母「透がまた笑えるようになったのは、あなたのおかげなのよね。私たちじゃどうしようもなかった傷を癒してくれたのは桜野ちゃんなのよね」
桜野「そ、そんな……わたしまだなにも……」
透母「ううん……桜野ちゃん、改めてお礼を言わせて」
桜野「ぁ……」
透母「娘を、透を助けてくれてありがとう。本当に本当に、本当に……ありがとうっ……!!!」
桜野「……!」
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