ご都合主義のハッピーエンド
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2:創る名無しに見る名無し
2023/07/17(月) 22:32:41.93 ID:JN8rkeEGO
◇ ◇ ◇

「えー、以上が私が隠していた、キミの自殺未遂の真相でございます。改めて、本当にごめんなさい!」

珍しく真剣な顔をして話を始めるものだから、身構えていたのだけれど、蓋を開けてみればコレでちょっと拍子抜けである。アナタは、すごくバツの悪そうな顔でボクに謝るけれど、ボクとしてはそれが何だである。
「別に、そんなこと気にしませんよ。ボクをあの日々から救ってくれたのがアナタだってことに、なんの変わりもないんですから。だから、ありがとうございます。です」

「でっ、でも、それは結果論で……」

「あの日、アナタが歌を歌ってくれていなかったら、今のボクはないんです。あのクソみたいな日々の中で、只々、身も心もすり減らして、いつかは死んじゃってたと思います。だから、いいんです。アナタがボクにごめんなさいって言い続けるなら、ボクはアナタにありがとうって言い続けます」

「……そっか」

割りと長いこと難しい顔をしていたけれど、なんとか納得はしたくれたようで、今度はバツの悪そうな顔ではなく、少しだけ笑っていた。
「それはそれとして、あの日のボクたちは狂ってましたけどね」

「いや、うん。なんであんなことしたんだろうって思う」

完全にハイになってたよなあ……。まあ、それで今のボクがあるので文句は言えないんだケド。
 それにしても、すごい展開だよなあ……。自殺未遂の後、海の中にある人魚さんの家に案内されて、水中で暮らすことになるなんて。最初こそ驚きの連続だったけれど、なんとかなっているのだから不思議である。そうして、今では立派な居候。勿論、家事とかはしてるけどね。それと、ここは地上よりも時間の流れがゆっくりらしく、なにかを学ぶのには丁度良いそう。そんな背景もあって、ボクは今、人魚の学校に通っている。なんと友達もできた。
 「生きていて楽しい」今は心からそう思える。人魚さんには本当に感謝しかない。ボクの馬鹿を治してくれて、その上、人並みの生活をさせてくれている。
 この恩を返せる気がまるでしないけど、どうにかして恩を返さなきゃね。けど、人魚さんは家事をして一緒に暮らすだけでいいって言うもんだから、増々、返し方が分からなくなってくる。
 今度、人魚さんの妹さんに人魚さんの好きなものを聞いて、作ってみようかな……。人魚さん、意外と好みが子供っぽいんだよなあ……。

 ……ただ、もう一つだけ望んでもいいのなら。もう少しだけ、欲張って良いのなら。


――「どうか、この幸せが続きますように」

◇ ◇ ◇

終わり。


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