858: ◆VLsOpQtFCs[saga]
2023/08/28(月) 21:43:54.00 ID:vYGiz8xqO
〜ケン視点〜
私達は無事に研究所へ帰還した。
研究所のサーバーへやってきた敵デジモン達は、うまくメガとファンビーモンが倒してくれたようだ。
ファンビーモンは、我々の命令を聞かない。
だからセキュリティデジモンとして作戦を遂行するのには向かない。
しかしそれは、決してファンビーモンが劣ったデジモンだからではない。
我々の世界にいるスズメバチの女王は、親から何を教わるでもなく、ハニカム構造の巣の作り方を知っている。
コマユバチ等の狩り蜂は、誰から教わるでもなく、卵を寄生させるターゲットを特定する術を知っている。
イチジクコバチは、誰から教わるでもなく、自らの卵がイチジクの花へ産み付けるものだと知っている。
後天的な学習を必要とせずに、持って生まれてくる知識。
進化によって洗練され、生まれるときに脳へあらかじめ書き込まれた、優れた生命活動のプログラム。
…それが本能だ。
モスモンから受け継いだ、生まれついてのハンターとしての完成された狩猟本能が、このファンビーモンには備わっている。
…ファンビーモンは命令を聞かないし、トレーニングもしない。
だがそれでいいのだ。
縄張りへの侵入者を攻撃し、活きのいい餌を仕留めるだけでいいのなら、ファンビーモンには命令もトレーニングも要らず、それを本能で行えるのだ。
デジモンは道具じゃない。
我々の仲間…
いや、仲間であるとすら断言し得ない。
デジモンは生物だ。
己の生存のために、全力を尽くす命だ。
道具扱いできなくても、仲間扱いできなくても。
その生物としての在り方そのものを、活かすことはできるのだ。
我々デジモンテイマーに問われるのは、その手腕と言えるだろう。
…とはいえ。
デジタルワールドで見かけるファンビーモンはもっと大人しい。
親のモスモン譲りの凶暴性と戦闘力を兼ね備えたこの個体は、特殊な存在のファンビーモンといえるだろう。
…いま困っていることがあるとするなら…
ファンビーモンはサーバーに居座って勝手に巣を作り、キャンドモンとシャーマモンの死骸を肉団子にして貯蔵していることだ。
…まあ、食い終わった頃に、餌の匂いで誘導して第二ビオトープへ戻すとしよう。
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