12:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:07:21.95 ID:FRtckmfc0
郁代がどんな寝顔をするのか、少しだけ見てみたい。ひとりは顔まで覆った毛布に手をかけ、少しだけまくって郁代の方を見てみた。
「……えっ」
「あ、ごめんなさい」
「なっ、ななななんでこっち見てるんですか……」
「いや……ひとりちゃんが、私の部屋にいるんだなーと思って」
「えぇぇ……?」
ひとりが目を開けると、郁代はベッドの上にちんまりと座っていて、大きな目がベッドの上からじっとこちらを見下ろしていた。
どうやら物音ひとつ立てずにずっとこちらを眺めていたらしい。恥ずかしくなって慌てて毛布の中に隠れると、「それじゃ寝づらくない?」と毛布をめくられてしまった。
いたずらっぽく笑った郁代は大きな伸びをして寝転がり、ひとりと目が合うよう、ベッドのへりの部分ぎりぎりに横になる。ひとりも少し恥ずかしかったが、顔をそむけずにじっとこらえた。
「今日は楽しかったなぁ……ありがとね、ひとりちゃん」
「いえ、助けてもらったのはこっちですから……」
「……本当によかった。今日たまたま本屋さんに寄ってて」
「……ありがとうございます、ほんとに……」
「ふふっ、いえいえ」
ぽつぽつと交わす言葉の合間に、沈黙が流れる。けれど、いつものような気まずい沈黙ではなく、心地いい静寂のようにひとりには感じられた。
こんな風に落ち着いて郁代と言葉を交わしたのも、はじめてかもしれない。
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