三千院ナギ「ハヤテはヒーローなのか?綾崎ハヤテ「うーん……悲劇のヒーローかもね」
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7:名無しNIPPER[sage saga]
2022/12/12(月) 00:32:48.35 ID:ut9KlGsqO
「あの、僕やっぱり……!」
「あん? どこに行くつもりだよ」
「もう寿司屋予約してんだけど?」

お寿司。食べたい。この機を逃したらもう食べれないかも知れない。それでも僕は。綾崎ハヤテはあの子を見捨てることは出来ない。
見捨てて食べるお寿司は美味しくないから。

「すみません! この自転車お借りします!」
「え? あっ! ちょっとあなた……!」

(馬鹿だなぁ、僕は。はあ……お腹空いた)

ハヤテは女性から自転車を拝借して駆けた。
もうどうでもいいさ。何もかも置き去りに。
業界最速の自転車便の名は伊達じゃあない。
ハヤテ。その速さはまさしく、疾風の如く。

「……その子を返してくれる?」

ボンネットに飛び乗ったハヤテがそう要求すると素直に車を停め返してくれた。ツインテールの女子小学生。怪我はなく元気そうだ。

「大丈夫?」
「……お前は何者なのだ?」

ハヤテが声をかけると女子小学生は警戒心丸出しでそう訊ねた。それも当然である。見ず知らずの男が必死に自転車を漕いで車に追いつくなんて奇妙を通り越して不気味だった。

「僕は綾崎ハヤテ」
「ハヤテ……どうして私を助けたのだ?」
「どうしてかな……たぶん、君のおかげで人を騙すようなことをせずに済んだからかな」

ハヤテと名乗ったその男の言い分はやはり奇妙で意味不明だったが、それでもツインテールの少女、三千院ナギの興味を引くという意味では満点の回答だった。ナギは女子小学生ではなかったがそういうミステリアスなヒーローに憧れる年頃だった。そうヒーローだ。

「ハヤテはヒーローなのか?」
「うーん……悲劇のヒーローかもね」
「ぷっ……なんなのだ、それは」

悲劇のヒロインみたいに幸薄そうな顔をしてそんなことを口にするハヤテに思わず笑みが漏れて自覚する。気に入ったということに。


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