4: ◆Kg/mN/l4wC1M[saga]
2022/11/25(金) 00:03:40.52 ID:YjhaJr8i0
このときの私は、自分が何者であるのかも、なぜここにいるのかも分からなかった。
私が知っていたのは、ここが765プロライブ劇場という名前の施設であること――この劇場が、アイドルたちが共に過ごし、公演を通してファンたちと夢を共有する場所である、ということだけだった。
壁に貼られたコルクボードに、写真がいくつか貼られていた。
写真の中の少女たちは、長い髪を振り乱しながら、ステップを踏んでいる。
レッスンの最中だろうか? その表情はあまり余裕があるようには見えなかった。
ただ、その瞳たちは力強い輝きを纏っていた。瞳に宿る色は一人一人違っていて、その一つ一つが彼女たちを突き動かしているのだと分かった。
最後の写真は、彼女たちがステージに立っている姿を舞台袖から映したものだった。
アイドルたちはいま、煌びやかな衣装を身にまとって、色とりどりの光の波に包まれている。
彼女たちの頬には幾筋もの汗が伝っている。そして、その横顔はどれも、夢を抱きしめた喜びで満ちていた。
彼女たちは、光り輝くステージに立つ、たった一瞬のために青春を懸けている。
その姿は、生まれたばかりの私にとって、あまりにも衝撃的だった。
私も、彼女たちみたいに自分だけの色を纏えたら、どんなに素敵なんだろう――そう思った。
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