15: ◆Kg/mN/l4wC1M[saga]
2022/11/25(金) 00:13:19.76 ID:YjhaJr8i0
三人を見送ったあと、私は劇場の屋上にいた。
この場所だと、一人になれるから。
建物の壁際に据え付けられた腰掛けに、私は腰を下ろした。
ふと、そこから空を見上げた。
目の前にあったのは、今にも泣き出しそうな曇り空だった。
まるで今の私みたいだ、と思った。
劇場のみんなは、それぞれの輝きを持って光っている。
客席に広がるペンライトの光を受けて、スポットライトを浴びて、みんなはどんどん輝いていく。
それは私にとっても嬉しいことのはずなのに、私は――。
左後ろの方で、小さく、何かが軋むような音がした。
それが屋上の扉が開いた音だと気づいたのは、それから少し遅れてのことだった。
どきり、と心臓が大きな音を立てた。
誰かが来てしまった。
真っ白になった頭で私ができたのは、咄嗟に濡れた目尻を拭って隠すことくらいだった。
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