816: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/08(木) 10:35:07.92 ID:S2FBcmzU0
──頭がカッとなる感覚がした。
もちろん菜々への怒りではない。菜々の親への怒りだ。
こんな──どう考えても言わされているような言葉。
私は菜々の想いを散々聞いてきたからわかる。こんなの菜々の本心じゃない。
菜々『最初のポケモンと図鑑は……他の子にあげてください……。きっと……私が貰うより……幸せだから……』
善子「菜々……っ……私は……っ」
菜々『いっぱいお話聞いてくれて……ありがとう、ございました……』
──ツーツーツー。その言葉を最後に、通話は切れてしまった。
善子「…………何よ、これ……」
私は思わず椅子にもたれかかって、天井を仰いだ。
😈 😈 😈
その日の深夜のことだった。
どうしても眠る気分になんてなれずに、ボーっと椅子に腰かけていると──prrrrrとポケギアが鳴った。
善子「…………深夜2時よ、何考えて──」
ぼやきながらギアの画面を見て、目を見開いた。
急いで通話に応じる。
善子「菜々……!?」
菜々『……よは、ね……はか……せ……っ……。……わた……し……っ……たびに……でたい、です……っ……』
菜々は通話の向こうで泣いていた。
悲痛な声で、親の前では言うことを許されなかった気持ちを、吐露しながら。
善子「菜々……っ……いいわ、私が許可する……!! 私の所に来たら、旅に送り出してあげるから……!!」
菜々『……たくさん……ポケモンと……っ……なかよく、なって……っ……つよい……とれー、なーに……なり、たい……です……っ……』
善子「なれるわ……っ!! 菜々なら、絶対……っ!!」
菜々『ほん、と……ですか……?』
善子「ええ!! 私が保証する!!」
菜々『でも……お父さんも、お母さんも……ゆるして、くれない……から……っ……』
善子「説得しましょう……!! いえ、ヨハネが説得してあげるわ……!! 旅が危ないって言うなら、ヨハネが貴方の旅に付いていってもいい……!! だから……!!」
菜々『………………ぐすっ……。…………ありがとう、ございます……っ……。……はかせ……っ……わたし……もうちょっとだけ……がんばります……っ……』
善子「菜々……?」
菜々『……当日……待っててください……絶対、ツシマ研究所に……行きます……から……』
善子「……ええ、待ってるわ。……菜々のこと、待ってるから……!」
菜々『……はいっ』
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