145: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/22(月) 22:27:10.36 ID:SUUU0L0dO
灯花が見せたのは、金色の延べ棒の形に整えられた金属だった。
手に取ってみると冷たくて軽く、裏返したりして観察すると灯花に返した。
「ヒヒイロカネって、見た目よりも軽いんだね」
「金よりも軽いんだよ。熱伝導率も優れてて、永久不変で絶対に錆びなくて、ダイヤモンドより硬いの。
太古の時代は鉄や銅と同じくらい、普通の金属として使われていたらしいんだけど、現代では原料も
加工技術も失われているの」
そこへ、部屋の扉が開いて視線を移すと、ねむと桜子が立っていた。
「ただいま、灯花。お姉さんとういも来てくれてたんだ」
「|いろは、うい、久しぶり|」
「久しぶり、桜子ちゃん。本の中からずっと出てこないって聞いてたから、心配したよ」
「|心配させてごめん、いろは。ずっと考えをまとめたり、他のウワサたちと話したりしていた|」
「もう大丈夫なの?」
「|ういにも心配をかけた。未来に渡るまで、この時代でどう過ごすか決めた。だから、もう大丈夫|」
「ヒヒイロカネをお披露目していたんだね。過去に日本神話に基づいたウワサを作ったけど、
こんな形で役に立つ日が来るとは思わなかった」
「伝説の金属を実現しちゃうなんて、すごいよ。三神器を作った金属なんだっけ?」
「そうだよ。日本神話において、天孫降臨(てんそんこうりん)の時に、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が、
天照大神(あまてらすおおかみ)から授けられたという、鏡、勾玉、剣。この三つはヒヒイロカネから
作られている、と言われているんだ」
「|八咫鏡(やたのかがみ)・八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)・天叢雲剣(あめのむらくも)。
いずれも日ノ本の象徴の存在の正当性を裏付ける神物、という意味がある|」
「実物を見たことがないのに、伝説の金属をどうやって再現したのかな?」
「灯花のおかげなんだ」
「スーパーコンピューターを借りて計算したんだよ。と言っても、計算するにはデータも必要だから、
そのデータはわたくしが作ったの」
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