68: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2022/10/11(火) 23:05:43.47 ID:GA2SequC0
銃声。警察官が使う小口径の拳銃などよりは遥かに重いものでこそあれ、それは明確に通常の歩兵火器が奏でた単発のものです。
戦場という広い括りで見れば聞こえるのは当然かも知れません。ですが、砲弾が飛び交いミサイルが入り乱れ戦闘機が空を駆け巡る“海戦”においては、朗らかな歌声に匹敵するほど──何れかの艦隊の那珂ちゃんさんがいる場合その限りではないかも知れませんが──場違いなものでした。
最終的に三度まで、銃声は鳴り響きました。艦娘としての優れた動体視力が、まさに対空兵装を構えつつ回避運動に移っている綾波たちと降下してくる敵編隊の間を遮るようにして、同じ数の銃弾が飛び込んでくる瞬間を捉えます。
「All squad, Attack!!!」
〈〈〈サー、イエッサー!!〉〉〉
途端、銃弾が“機影”に姿を変えました。
綾波達にとっては“苦い記憶”の一つでもある、アメリカ軍の艦上戦闘機グラマンF6F【ヘルキャット】。計12の青い機体は、零戦の倍にもなる馬力の発動機を存分に唸らせ猛然と空を駆け上がります。
〈エンゲージ!!〉
〈ファイア、ファイア、ファイア!!〉
『『『!!?!??!?』』』
唐突な、横槍ならぬ“横弾”により発生した正面切っての航空戦。数の面ではヘルキャット隊と向こうで比べようもないほど差がついていましたが、何分向こうはここに来ての空対空戦闘など欠片も予想していなかったことでしょう。迸った十数条の12.7mm機銃による火線は、その尽くが敵機にそのまま突き刺さり機体を引き裂きました。
『『……………ッッ!!』』
無論、深海棲艦側も木偶ではありません。数個編隊分がまるごと食いちぎられたことで状況を理解したのでしょうか、慌てて回避運動に移りヘルキャット隊の進路上から離れつつ、すれ違いざまに次々と射撃を加えていきます。
〈ハッハッ、ナンダイ、クスグッタイジャナイカ!!〉
〈マサカソレガキジュウソウシャノツモリダナンテイウナヨ、ディープワンズ!!〉
ですが、その試みは大半が無駄弾を増やすだけに終わりました。
米軍製兵器の特徴である、搭乗者や操縦者の生存性向上を最大限追い求めた凶悪極まる安定性と防弾能力。
F6Fは取り分けその両特徴が色濃く現れた機種でもあります。同機が備える何れの要素も、行き交う間際の“一撫で”如きで揺るがせるものではないことはこの身に刻み込まれています。
地獄より使わされし猫たちは、被撃墜どころかまともに飛行姿勢を崩す機体すら殆ど現れません。彼らは悠然と飛行を続け、時に“深追い”してきた敵機を逆に喰らいさえしながら、至極あっさりと「群れ」を打通しきってみせました。
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