エンド・オブ・ジャパンのようです
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146: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2023/02/01(水) 23:04:06.10 ID:qlo4HhBq0
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今でも、はっきりと覚えている。“あの時”の胸の高鳴りを。脳を、心臓を鷲掴みにされたが如き圧倒的な衝撃を。

たった一人の男の演説によって、敗北への諦観が勝利への渇望に、死の絶望が生の希望に塗り替えられる有様を。
たった一人の男の雄叫びによって、火山と岩と砂とほんの少しの草木しかない殺風景な島に、目に見えぬ巨大な炎が燃え盛る瞬間を。

まるでつい数秒前に目にしたが如く、自分はその光景を想起できた。

《敵艦載機群第6波並びに第7波、総数500超なおも鎮守府に接近す!到達まで推定あと400秒!!

対空警戒を厳と成せ!繰り返す、対空警戒を厳と成せ!!》

《指示に変更なし、【第一】〜【第四連隊】各位は現防衛線を維持!当初の“防衛計画”に則り、【第五連隊】並びに鎮守府内の対空火力にて敵航空群の迎撃を行う!!》

《【スカイシューター】、全車展開を完了!各区妖精より艤装による臨時対空陣地完成の報あり!》

「ハッ、ハッ…………」

「おい、力を抜け……!」

現在の状況は、“あの時”とよく似ていた。圧倒的寡兵、勢いに乗る“敵”、孤島での迎撃戦………類似点がこれほどまでに多いからこそ、自分は尚更“あの時”のことを鮮明に思い出したのかもしれない。

(寧ろ、“あの時”の方が自分が置かれていた状況は厳しいかもしれないな)

頑迷な老人がよく口にする「ワシが若い頃は……」という戯言に通ずるものを感じ、我ながら辟易する。ただ弁明させて貰うと、実際“あの時”の自分達には艦娘も鎮守府も潤沢な対空兵装も存在しなかった。
与えられた火器は大半が在庫処分の骨董品で、おまけに“友軍”連中は支援どころかこちらを攻めてくる深海棲艦の群れごと吹き飛ばす腹づもりだったのだ。

この作戦を立案した当時の上層部のお歴々が南首相には

『島嶼防衛部隊は機を見て脱出する手筈だったが通信機の故障により連絡が途絶し、非常の判断でやむを得ず攻撃を敢行した』

という設定を捏ち上げる予定だったと聞いたときには、思わず腹の底から笑ったさ。


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