24: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 00:56:21.67 ID:Sev9O2YP0
『ターゲット層はロリコンのオタク』
マネージャーがそう言った通り輝子はロリータ衣装に身を包み、とにかくかわいらしく振舞った。
当然キノコもメタルも封印した。幸子と小梅にすらその趣味の事を話す事はなかった。
やがて三人のユニットはマネージャーの目論見通り、20代以降の男性層を中心にヒットした。
他に人気アイドルが多数所属している事務所なので大した扱いにはなってはいないが、
それでも以前の事務所にいた頃とは比較にならない程のファンが付いていた。
輝子は大量に届いたファンレターを読んで、にやにやと嬉しそうに笑っている。
『輝子ちゃん、大好きです!!』
『出勤前、輝子ちゃんの唄を聴いてやる気出してます』
『かわいすぎる、ありえん。天使か?』
『輝子ちゃんのおかげで友達ができた!ありがとう!!』
そういった内容の手紙が段ボール箱いっぱいに届いているのだ。
みんなが私を褒めてくれている。そう実感し、吊り上がる口角を抑える事ができない。
「輝子さん?」
「フヒャッ!?」
背後から急に話しかけられ、変な声を出してしまった。
幸子は驚く輝子の反応に驚いている。
申し訳なさと恥ずかしさに頭を掻く。
「ご、ごめん。何?」
「い、いえ……じゃなくて、これ、どうぞ!」
幸子はCDケースを差し出した。
「これは…?」
「前輝子さんこのアイドル好きって言ってたじゃないですか。もし持ってなかったら貸してあげますよ」
ずきん、と心が痛むような気がした。
「そ、そんな…いいのか……?」
「いいんですよ!どうぞどうぞ!」
遠慮がちに受け取り、ジャケットをまじまじと見つめながら笑う。
これはトモダチ同士がやる物の貸し借りというやつではないか。
今になって実感が湧いてきて、なんだか胸の奥でこみ上げてくるものがあった。
「ありがとう幸子ちゃん。すぐ聴いてみるよ」
二人は嬉しそうに微笑んだ。
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