13: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 00:44:13.47 ID:Sev9O2YP0
「なんだ、気付いてなかったのか?」
男は彼女を鼻で笑う。
「親友が、私を捨てる…?そんなこと……」
ついさっきまで勇ましく吼えていた彼女の面影はない。
不安そうに視線を動かし、幼子のように両手を胸の前で握る。
「だって、親友は…私のためにって…」
「そんなもん方便に決まってんだろ」
男は続ける。
「考えてもみろ。キノコだのメタルだの気持ち悪いものに固執して、挙句の果てに
大声で喚き散らかす。厄介払いできて清々してるだろうさ」
心臓が凍るように冷たく感じた。体中から汗が噴き出るのを感じた。
今にも泣きそうな顔をして、声を震わせ、壊れた玩具のように「違う」と呟き続ける。
そんな彼女に男は容赦なく罵声を浴びせ続ける。
「分かるか?その優しい『親友』とやらも匙を投げるほどの社会不適合者なんだよ、お前は」
「誰からも好かれない。会う人全員に嫌われる。永遠に独りだ」
「自分を客観的に見たことがあるか?薄汚い菌の塊を好んで触って、
喧しいだけの音楽を聴いて不気味に頭を振っている自分を」
「キノコもメタルもお前を救いなんかしない。お前を殻に籠らせるだけだ」
「お前が固執してるものが、お前を独りにさせてるんだよ」
言い返す事ができない。
親友に捨てられた。この男はそう言っている。
嘘だと思いたい。だが男の話を聞くと、本当にそうだと思えてくる。
自分の気持ち悪さは分かっている。
でも親友は優しくしてくれた。
……嫌々だったのか?こんな気持ち悪い自分とは、さっさと離れたいと思いながら、
嫌々付き合ってくれていたのだろうか?
一度そう思うと、もうその思考は頭から離れない。
ぐるぐると真っ黒な感情が脳に充満し、彼女は震えながら俯いた。
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