51:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 00:38:40.29 ID:XVB8s0iW0
2 『人間』
エーシルは光と闇の戦いに直接介入しなかったが、
関心がないわけではなかった。
むしろ最終戦争も含めてあらゆる混乱を収めるためにも、
新世界を構築しようとしていた。
光陣営には幸運だったことに、彼は基本的に善良な人格であり、
光も闇も含んだ全生命の共存共栄を願い、世に安定をもたらそうと考えたのである。
そしてその方法こそ、光と闇、そこに第三の混沌世界を加えて
均衡をもたらすというものであった。
こうした彼の計画は、
未来を把握する『時の記憶』の力によって得られた見識に拠っていた。
もっとも、その未来視は完全なものではなかった。
原初時代の完全なるOMNEと比べたらエーシルでも不完全であり、
枝分かれする未来像全てを網羅することはできなかった。
だがそれでも、己の行動がもたらす未来については
すでに大まかに知っていた。
己の力はあまりに絶大すぎるため、現段階における攻撃的な行動、
つまり光と闇の戦いに直接介入してしまうと、「どの未来」であれ全てを破綻させる、
この「物語」そのものを破壊し尽くしてしまうと彼は知っていた。
そのため彼は、武力によって光と闇を制するのではなく、
原初世界群に代わる新世界構造を作って均衡をもたらす、という方法を選んだ。
そしてその新しい世界群像こそが『三位一体世界』であり、
そこに均衡をもたらす手段こそ混沌界、
ここを天界と魔界に並ぶ一大生命圏にすることだった。
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