151:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 12:16:04.36 ID:XVB8s0iW0
このような背景と動機だったため、
彼女の提示した『位相』案はもちろん最適なものではなかった。
一応は最低要求を満たしてはいたが、
異質な才の大量出現、大規模な混乱の可能性、
信仰体系の膨大さと不安定な傾向など、
多くの不確定要素をはらんでいた。
くわえて、『位相』の構造自体も他の魔神たちの案と大きく異なっており
それがさらに安定を損なっていた。
他の素案は、隅から隅まで設計された緻密なもの、いわば箱庭型であったが、
オーディンのものは彼女の記憶を基点として、
水面の波紋のように広がって形成されるものだった。
明確なのはオーディンが記憶している基点部分のみであり、
それ以外の大部分は不明確。
いわば「種」から大きな幹が上に伸びることはわかるも、
広がる枝葉の数や形状は成長しなければ詳細不明、といった具合だった。
言ってしまえば、彼女の素案は
新人間界の姿を定める設計図としては完璧に程遠い、
穴だらけの未完成品だった。
だが四元徳による最終選定の末、
選ばれたのはこのオーディンの未完成品だったのである。
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