【コンマ】ウマ娘とトレーナーがラーメンを食べに行くだけのスレ
1- 20
662: ◆/4adlfiarI[saga]
2022/05/29(日) 18:48:36.46 ID:Ei6SN/jaO

「スープの匂いは……普通ですね」

麺を持ち上げると、極細麺にスープの脂が絡んでいた。思い切って啜ると……


「んっ!!?」


濃厚な豚骨の旨味がダイレクトに舌を刺激した。そして、何より……熱いっ!

「……違う」

レンゲでスープを味わいながら、風祭さんが呟く。しかし、表情には驚きはあっても、落胆はない。

「えっ、それってどういう……」

「俺の知っている長浜ラーメンとは違う。だが、紛れもなくこれは豚骨だ。
濃厚な久留米でも、ライトな長浜でもない。こんな豚骨ラーメンがあったなんて……」

そう言いながら、風祭さんは麺を啜った。そして小さく頷く。

「東京風にアレンジしたわけでもない。……何だろう、これは……」

よく分からないけど、美味しいのは確かだ。もう一度私は麺を味わった。パツパツとした歯応えが、サラッとしたスープにとても合っている。
スープは脂っこいかと思いきや、意外と後味はサッパリしている。濃厚だけどクドくない、それでいて薄くもなく濃厚。
矛盾したものが両立している、そんな不思議なスープだ。そしてスープをよく見ると、何か細かい粉みたいなものが沈んでいる。……骨の粉末?っぽい。

ゴマと辛子高菜、そして紅生姜はカウンターから入れ放題らしい。辛子高菜を一欠片入れると、味が一気に引き締まった。
何より、このスープを覆う油膜だ。スープが冷めにくいから、味がしっかりしたままでボヤけない。これが本場の豚骨ラーメンなんだろうか。

ふと横を見ると、風祭さんが「替え玉頼めますか」と訊いていた。あ、そういえばそんなのもあるんだっけ。

「トレーナーさん、どうです?」

「旨い。ただ、このスープの正体は何だ……?」

ご主人が替え玉を持ってきたタイミングで、風祭さんが切り出した。

「すみません、こちらどこで修行を?」

「あー、うちは『博多シャバ系』の『駒や』なんです。割と新しい系列なんで、知らない福岡の人も多いかもですね」

「『博多シャバ系』」

「ええ。スープの取り方も普通のお店と大分違うんです。というか、大昔のやり方に近いのかな。
だから、『古いけど新しい』豚骨ラーメンなんです」

豚骨ラーメンにも派閥みたいなのがあるんだ。全然知らなかった。

ご主人が厨房へと去ると、風祭さんはぼーっとしていた。

「古くて新しい、か……固定観念に囚われていたのかな」

そう言うと、替え玉の麺を啜り、また「……うん、旨い」と彼は呟いたのだった。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
718Res/329.31 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice