晴れ空に傘-SS速報VIP

晴れ空に傘

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49: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:52:48.10 ID:f7viqcKro
親にも友達にも言えない悩みを唯一打ち明けられたのは、陽子先生と剛先生だけで、
俺は毎回ここに訪れるのが楽しみで仕方なかったんだ。

凪「じゃあ、付いてきてください」

以下略 AAS

50: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:54:24.34 ID:f7viqcKro
しかし、時すでに遅し。
凪はビニール傘を畳んで、勢いよく入り口の引き戸を開けていた。

凪「お母さーん！　ただいまー」
棚にスニーカーを仕舞いながら、元気に声を上げる。

以下略 AAS

51: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:56:08.45 ID:f7viqcKro
陽子先生は、こちらにゆっくりと視線を向けた。
陽子「あれ、アナタ……」
少ししわが増え、体型もちょっとだけ太ったけれど、そこにはあの日のままの先生がいた。

男「先生、俺……」

以下略 AAS

52: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:57:03.24 ID:f7viqcKro
陽子「凪が連れてきたの？」
凪「うん、じつは根図橋で――」
男「あ、待ってください」

俺はまずい、と思ってすぐに話を遮った。

以下略 AAS

53: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:58:14.60 ID:f7viqcKro
凪が余計なことを口走る前に、急いで取り繕う。

男「それが、なんだか急に懐かしくなっちゃって……」
男「近くを通ったものだから、久しぶりに覗いてみようかな、なんて思ったんです」

以下略 AAS

54: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:59:49.65 ID:f7viqcKro
陽子「男くんは会ったことないよね？　その子は娘の凪」
陽子「もう中三だっていうのに、落ち着きがなくて困った子なのよ」
凪「余計なこと言わないで。ってか、外で自己紹介はしたからもう分かってるよ。ね？」

そう言うと、凪はこちらを振り向いてわざとらしくウインクをしてみせた。

以下略 AAS

55: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 05:01:19.89 ID:f7viqcKro
陽子「本当に速いよ。そっか、男くんがここを巣立ってから、もう十年かぁ」
陽子先生はしみじみとそう言うと、「そんなになるのかぁ……」と小さくこぼした。

陽子「今はこっちに住んでるの？」
男「そ、そうですね。東京の大学を卒業してからは、こっちで」

以下略 AAS

56: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 05:02:54.30 ID:f7viqcKro
陽子「それで、今はどこでお仕事してるの？」

やっぱり来た。
大人からすれば、この”至極当然”の質問。
でも俺にとっては、何よりも恐ろしい拷問のような質問。

以下略 AAS

57: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 05:06:05.42 ID:f7viqcKro
その時に思った。
俺はどうしてか、やっぱりこの子に救われてしまうんだって――。

凪の「声」を聞いて不思議と気持ちが軽くなった俺は、気負わずに答えていた。

以下略 AAS

58: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 05:08:25.93 ID:f7viqcKro
そして間髪入れずに、凪が会話に続く。
凪「ねえお母さん、うちって今人手不足なんだよね？」
陽子「そうね。私一人なのに生徒の数は変わらないから、万年忙しいけど……」

男「え、ちょっと待ってください。一人って、剛先生は……？」

以下略 AAS

59: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 05:10:08.82 ID:f7viqcKro
意外だった。
俺が生徒だった頃は、剛先生もバリバリに教鞭をとっていたし、
なんなら塾長的な役割も担っていた。

いつも快活に笑っている楽しい人で、この仕事が好きなんだと思っていたが……。

以下略 AAS

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