晴れ空に傘-SS速報VIP

晴れ空に傘

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41: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 03:45:03.45 ID:f7viqcKro
少女「――凪」

ぽつりと、少女が口にした。

男「な、なぎ？」

42: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 03:46:08.26 ID:f7viqcKro
凪「これでもう私たちは他人じゃないです。そうですよね？」
男「そんなこと言ったって……」
凪「いいんです。付いてきてください。ここから歩いて15分もかからないです」

そう言って”凪”と名乗った少女は躊躇なく歩き始めた。

以下略 AAS

43: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 03:47:53.33 ID:f7viqcKro
くるくると透明な傘が揺れる、凪の小さな背中を追って歩くこと15分。
俺は”とても見覚えのある”建物の前にいた。

そのこじんまりとした、でも白くてどこか清潔感のある家屋には――
『七瀬川学習塾』

以下略 AAS

44: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:08:55.33 ID:f7viqcKro
男「この塾が君ん家？　嘘だろ？」
凪「嘘じゃないですよ、ここは私の家です」
男「信じられねえ……俺、中学の時ここに通ってたんだ……」

凪「ええ、本当ですか！」

以下略 AAS

45: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:45:18.91 ID:f7viqcKro
男「じゃあ七瀬川先生――いや、陽子先生と剛先生は……」
凪「私のお母さんとお父さんです」
男「そうだったのかぁ……」

言われてみれば、凪からは確かに二人の面影を感じた。

以下略 AAS

46: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:48:54.65 ID:f7viqcKro
今まで味わったことのないような、不思議な感情が湧き上がってくる。

男「それで、陽子先生と剛先生は……あの二人は今も元気？」
凪「はい、元気ですよ」
男「そっか、よかった……」

以下略 AAS

47: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:49:48.23 ID:f7viqcKro
塾舎を見ると、曇りガラスの向こうから白い灯りが溢れている。

男「今日は授業日なの？」
俺がそう訊ねると、凪は「そうですね……」と宙を仰いだ。

以下略 AAS

48: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:50:59.33 ID:f7viqcKro
大人から見れば、中学生ってのは呑気なもんに見えるけど、
当時は当時で、本当に悩みや苦しみは尽きなかった。

親や教師からのプレッシャーはひどいし、勉強も部活も大変だ。
恋愛だって苦しかったし、友人関係にだって本当に悩んだ。

以下略 AAS

49: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:52:48.10 ID:f7viqcKro
親にも友達にも言えない悩みを唯一打ち明けられたのは、陽子先生と剛先生だけで、
俺は毎回ここに訪れるのが楽しみで仕方なかったんだ。

凪「じゃあ、付いてきてください」

以下略 AAS

50: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:54:24.34 ID:f7viqcKro
しかし、時すでに遅し。
凪はビニール傘を畳んで、勢いよく入り口の引き戸を開けていた。

凪「お母さーん！　ただいまー」
棚にスニーカーを仕舞いながら、元気に声を上げる。

以下略 AAS

51: ◆WiJOfOqXmc[sage saga]
2021/12/20(月) 04:56:08.45 ID:f7viqcKro
陽子先生は、こちらにゆっくりと視線を向けた。
陽子「あれ、アナタ……」
少ししわが増え、体型もちょっとだけ太ったけれど、そこにはあの日のままの先生がいた。

男「先生、俺……」

以下略 AAS

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