64:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 22:57:21.51 ID:u50g9+A20
「残念だったわね、主役になれなくて」
「奏さんも、残念でした」
「私は、いいのよ。別に」
文香の視線が、モニターから私に向けられていた。
その瞳は、やはり怒りを抱えていて。
「だって、仕方がないでしょ。プロデューサーが選ばなかったんだから」
プロデューサーの判断は、私は尊重する。納得いかないところはあるけど、私のプロデューサーは彼女だから。それに従うのも、アイドルである私の役目であって。
「私……なりたかったんです、主役に」
「主役になって、誰になにを伝えたかったの?」
文香が頑張っていた理由の一つは、そのことがあるようだ。
誰かに伝えたいからこそ、文香は人一倍頑張った。皮肉にも、そのせいで相手に伝えることはできなくなったが。
文香は、独り言のようにつぶやいた。
「えっ?」
なんと言ったか、私には分からなかった。
違う、言った言葉は確かに耳に届いていた。ただ、頭が処理させてくれなかった。
文香の言った、言葉。
「それは……奏さんに、です」
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