30:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 21:49:07.67 ID:u50g9+A20
「でも、ホントに嬉しいです」
コーヒーを飲みながら、何でもない会話をしているときに文香が言った。
「私がここを気に入ったことが?」
「えっ? いえ、それもそうですけど……お仕事が」
あの後フレちゃんと仁奈ちゃんの二人と別れた後、プロデューサーに呼ばれて向かうと、そこで二人だけの仕事について述べられた。深夜にやっているテレビ歌番組だ。
それに、文香と出ることになった。
「奏さんと、同じ番組に出れるなんて」
「今までだって同じ番組に出ていたじゃない」
同期の五人はよく一緒に番組に呼ばれることがあった。それ以外でも、帯のラジオ番組にある小さなコーナーの月間パーソナリティとして、五人で代わる代わる出たことも。
「そうですけど……やっぱり二人だけで呼ばれたのが……嬉しくて」
呼ばれた深夜番組には、うちの会社のアイドルがよく出演させてもらっていた。まとめてアイドルデビューさせるなかで、一人か二人、毎回選ばれて呼んでもらっていた。
深夜の落ち着いた雰囲気の番組だから、私たちがちょうどよかったのだろう。
「ああ、別に……ほかの人と一緒が嫌とかでないですよ……?」
「わかってる、それぐらい」
さっきの事務所での光景を見て、そんなことを思うわけがない。
私はワザとらしいため息をついた。
「まったく、あの文香があそこまで変わるなんてね」
「そう……ですか?」
「ええ、最初は他人になんて興味がないって位、本に集中していたのに」
文香は頬が赤くなった。室内は冷房が効いて、涼しいというのに。
「それは……忘れてください」
85Res/117.90 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20