25:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 21:37:58.64 ID:u50g9+A20
部屋につくと、そこには噂の元文学少女である文香の姿があった。
文香はいつものようにソファーで本に目を落としていた。
それだけでなく、もう一人、正真正銘の少女も一緒に。
「あ、奏おねーちゃんとフレデリカおねーちゃん!」
市原仁奈ちゃんだ。まだ小学生で、着ぐるみを着てなにかになりきるのが得意な子。
以前、文香は私より年上であることに気が引けていたけど、仁奈ちゃんのことを考えれば私ですらかなりのお姉さんになってしまう。
そんな仁奈ちゃんは、ソファーに横になりながら文香に膝枕されていた。
「あれれーどうしたのニナちゃん? お眠なの?」
ぴょんと近づいたフレちゃんが、仁奈ちゃんの顔を覗き込む。
「ちげーです! 仁奈は猫の気持ちになってるんですよ!」
「ニナ猫ってこと?」
「そうですよ!」
「どうして猫になんかなってるの?」
私の問いに答えたのは、文香だった。
「これです」
と、文香は読んでいた本の表紙をこちらにみせてくる。
タイトルは聞いたことがある程度。本よりも、その著者の名の方が誰もが知っているような歴史的な作家だ。その作者の中でも有名な著書といえば。
「吾輩は猫でごぜーます!」
「なるほど。だから仁奈ちゃんは猫になって、文香の膝に乗ってた訳ね。文香、本に夢中で仁奈ちゃんをおざなりにしたのかしら?」
「いえ、そんな……! 仁奈ちゃんが来て本を読むのをやめました。けど……話の流れで猫になられてしまったので。どうせならと私も本の続きに戻ったのです」
「あーわかる。猫といえば読書だよねー。猫飼ってないけど」
相変わらず適当なことを言いながらフレちゃんがうなずいていた。悔しいが私も同意だ。猫と読書はよく似合う。文香ならなおさら。
仁奈ちゃんをおざなりにしていたというわけでもなさそうだ。今だって無意識か、仁奈ちゃんの頭を文香は撫でていた。
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