【安価・コンマ 】ロボットのパイロットとして生きる【オリジナル】
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763:名無しNIPPER[saga]
2021/12/30(木) 21:09:27.32 ID:aJnFzVmt0
「ふぅ...ったく、デスクも人使いが荒い」

アルトは自分が務める報道機関のビルの窓から、星空を眺めていた。夜空に輝く光に目を奪われながらタバコの煙を吐く。
可愛い妹は何をしているのだろうかと、そんな考えがふと頭をよぎったその時、携帯が鳴った。

「もしもし?」

こんな時間にかけてくるなんてなんて非常識な奴だと思いながら電話に出ると、聞き慣れた妹の声が耳に入った。

「ああ、アンタか。どうしたんだいきなり?」

本人から明かされたわけでもないので相変わらず他人のふりをしながら尋ねる。しかしアルトには違和感があった。他人ぶって声色を変えている事を加味しても、いつもより妹の声の調子が低いのだ。

「声が聞きたかった?ただの他人の声をか?」

いつもの調子に戻してやろうとカズミを揶揄うが、今日ばかりは上手くいかなかった。

(こりゃ重症だな...)

以前にカズミがひどく落ち込んだのはいつだったかと記憶を探る。それは自分が気に入ってたぬいぐるみを、ピクニックの時にカズミが無くして以来だ、とアルトは思い出した。

「ところでアンタ、姉は居るのか?」

突然の質問にカズミは口籠った。

「よし、じゃあ仮に居るとしよう。妹が居たことがあるから分かるんだが、きっとお姉さんはこう言うだろうな」

アルトは親に反対されながらも記者になる夢を叶える為に家を出ると決心した時に、カズミに言われた事を思い出す。

「どうすべきか悩んでいるなら己を信じろ。その結果どんな事が起ころうとも、そのケツは姉であるアタシが拭いてやるってな」

あの時だけはいつもアタシに世話を焼かれていた妹が、逆に支えてくれたっけか、そんな事を思いながらアルトは微笑む。

アルトの言葉を聞いたカズミはしばらく黙り込む。
そして開いた口から発せられた言葉は短い返事だけだったが、その声には少し明るさが戻っていた。

「ハハ、元気出たか?なら良かったよ」

元気を取り戻したカズミはその後しばらくアルトと会話を交わすと電話を終えた。

「ったく、騒がしい妹だ」

その言葉とは裏腹にアルトの表情は明るかった。

「おっと、最後の一本か。仕方ない、これを味わったら仕事に戻るか」

タバコに火をつけるとアルトは再び星を見上げる。

「頑張れよ、カズミ」


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