キョン「またお祈りメールか…」
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6:名無しNIPPER
2021/09/20(月) 19:19:13.34 ID:ijUOeYjJ0

「いやぁ。ほんと久しぶりだねぇキョン。大学はこの辺りなんだっけ?」

「あぁ、そうだ。佐々木は大学は東大だろ?四ツ谷に何の用があって来たんだ?」

「覚えていてくれて嬉しいよ。近くの大学の授業を受けているんだ。聴講ってやつだね。僕の研究テーマで面白い講義をしている教授がその大学にいてね」

「なるほど。そういうことか」

他愛もない会話。
側から見れば、途絶えた交友を暖め合っている旧友同士にしか見えないであろう。事実、佐々木はそう思っているだろう。

しかし、俺は違った。
胸の奥にじめっとしたもやが生まれてきた。
そうだ。佐々木は東大生なのだ。俺よりも遥かに学歴が高い。当然、大手企業から内定を貰っているだろう。

佐々木はどこに就職するんだ?

確かに知りたい情報ではあったが、絶対に自分からは聞けなかった。
聞いて大手企業の名前が出て来たら、俺は自分自身がどんなドス黒い気持ちになるか想像もしたくない。

何でお前が。
俺だって頑張ってるのに。
お前も俺のことを馬鹿にしてるんだろ。
女のくせに。

自分にこんな一面があるなんて気付きたくない。
だから聞けない。
何よりそんなことを聞けば、「キョンは?」と聞かれるに決まっている。それだけは避けたかった。

「ところでキョン…」

「どうした?」

自分の想像によって自己嫌悪に陥っていたため、気が抜けていたのだろう。
次にされた質問には思わず絶句をした。

「君はリクルートスーツを着ているみたいだけど、内定者インターンか何かに行って来たのかい?」

「……っ……」

佐々木は頭が良い。俺が避けたくて選ばなかった話題を的確に選んでくる。
俺は、そういった頭の良さに惹かれて、彼女と話すようになったんだろうな、と思う。
そんな彼女の頭の良さを俺は初めて憎く思った。
そして、そんな考えに苛まれる自分にほとほと嫌気がさした。

もう、言ってしまおうか。

バイト先の人にも、学部の友人にも、家族にも、就活について聞かれた時は曖昧に答えて誤魔化していた。

しかし、聡明な佐々木にはそんな誤魔化は通用しないだろう。
そして何より、俺はこれまでの苦しみを誰かに伝えたかった。

褒めて欲しかった。よく頑張ったね、と。
許して欲しかった。もういいんだよ、と。

「実はだな…」

乾き切った唇を舐めて、切り出した。

受験に失敗したこと。
SOS団の皆は京大に進学したこと。
涼宮達と連絡をとっていないこと。
就活でまだ内定を獲得していないこと。
先週の面接で嘘の志望動機を伝えてお祈りされたこと。

俺は滔々とこれまでを語った。



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