43: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/04(土) 22:28:30.28 ID:aDnh4+ZCO
地元の小学校や中学校と異なり、わたしが入学するのは東京都内に建てられた超特権的な国立高校。卒業時の『特典』を目当てに、全国から多数の入学志願者がこの高校の門を叩くようだがその合格ラインは厳しい。
一学年あたり、わずか百六十名。
そんな学校にわたしの地元の知り合いは一人も居ない。いや、正確に言うと同級生は居なかった。もしかしたら今年二年に進級した先輩や、三年の先輩に地元が同じ人が居るかもしれない。少なくとも、推薦の話を貰ったときはそんな話は聞いていませんでしたが。
ともかく、完全初対面の相手に好印象を持ってもらえるように今日は乗り切りたい────と、そんなことを考えながら、高校前の停留所でわたしは降りる。
「ふぅ……!」
わたしは暖かくなってきた風を吸い込むように息を吸い、そしてゆっくりと吐く。緊張は無くならないけど、それでも十分に落ち着くことができた。
あまり停留所で立ち止まっても仕方がない。わたしは正門を跨ぐ。見上げれば巨大な校舎が視界に入る。
今日からここで三年間、わたしは様々なことを経験して勉強して、失敗もするだろう。でも、卒業の頃には、たくさんの友人に囲まれ、そしてたくさんの後輩に見送られるような人になればいいな、と。
期待と不安。その二つが胸の奥に感じながら、『新入生はこちらです』と書かれた案内板に従って講堂へと向かう。
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