429: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/10/12(火) 23:22:25.76 ID:FVjXptvb0
化野先輩は一度大きく頷き、
「誰かと待ち合わせか?」
「5分後に四条先輩と待ち合わせをしています」
「あー、あの女か」
先輩の顔が曇り、視線は遠いところへ向けられる。
その表情から読み取れるものは色々あるけど、少なくとも好意的な意識は欠片も存在していない。残ったのは憤りや妬みといった負の感情だった。
申し訳ないけど、この人とは長話をするだけ損だと自分の中ですぐさま折り合いを付ける。
「すみません、ついさっき連絡があって、5分後に別の場所で集合になったので失礼します」
頭を下げてその場を立ち去る。
一歩、二歩とケヤキモールとは逆の方向に進んだとき、先輩方の声が聞こえてくる。少し離れた場所で待っていた同級生と合流したようだ。
「今の、例の1年ですよね?」
「あぁ。あの裏切り者と待ち合わせしてるんだとよ」
「……チッ。あの女とですか」
「生徒会繋がりだろうよ。新汰の手駒かもなぁ」
わざとわたしに聞かせてるのか? って思うほどの声量で話す声はしっかりと聞こえて来た。
話に出て来た『裏切り者』とは、話の流れからして夏帆先輩のことで間違いない。
「……」
この学校の仕組み上、『裏切り者』と呼ばれることは少なくないと思う。
例えば今回の特別試験においても、わたしが『ねずみ組』の『王様』を他クラスに密告すれば、それはもう『裏切り者』となる。
夏帆先輩がどのような経緯でそう呼ばれることになったのかは分からないけど、ひとまず話半分で耳にしたという程度に留めておこう。
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