331: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/28(火) 01:06:42.50 ID:bvotKctjO
わたしの否定に先輩はクスッと笑い、話を続ける。
「まぁいいでしょう。ともかく、そうして有名になったお店は現在でもそこそこ繁盛して、毎月それなりに貯金できるくらいには儲かっているということです。ちなみにお店の雰囲気もさることながら、味も絶品だと思っています。多少贔屓目かもしれませんが」
「先輩の料理はどれも素晴らしいです! ご実家の洋食屋さんもきっと美味しいはずです!」
「そう言ってもらえると嬉しいです。ぜひこの学校を卒業したらいらしてください。腕によりをかけて、私の両親が作ります! 私は未熟者なのでお手伝いをしています」
思い返せば、先輩の料理を教えてもらうとき、先輩は包丁を握ることもフライパンの持ち手を握ることも無かった。ずっとわたしだけが手を動かして、先輩は口頭で指示を出すだけだった。つまり先輩の指導力は確かなものだが、その腕は未知数だ。
ただ生徒会の仕事を通して超器用な人だということは分かっているし、物事を並行に進めることも得意だと理解している。きっと口先だけではない実力を秘めているのだろう。
どんな時でも親の背中は大きく見えるもの。
それが、先輩が自分自身を未だ未熟者として思い込んでいる原因なのかもしれない。
「はい! 楽しみにしています。この学校を卒業したら、真っ先に先輩のご実家にお伺いしますね」
雨宮さんのアイドル活動のライブ、そして夏帆先輩のご実家。卒業後の楽しみがまた一つ増えた。
それから話が途絶えることなく、夜まで続いた。
約7時間煮込んだビーフシチューの味は端的にいって超絶美味しかった。レトルトや固形ルーとして売られいるものとは全く違う深みを始めて知った。
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