329: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/28(火) 01:05:36.86 ID:bvotKctjO
【>>328
1:実家の洋食屋について】
ビーフシチューは煮込む段階に入った。
弱火でじっくりと味に深みを出している間、自然とわたし達は居間でお茶することになった。
冷たい緑茶で喉を潤しながら先輩と世間話を始めて数分。ふと思ったことを聞いてみる。
「先輩のご実家って洋食屋さんでしたよね」
「はい、そうですよ。ご期待ほど大きいお店ではありませんけどね」
「いえ、そういうのではなく。どんなお店だったか聞いてもよろしいですか?」
「そうですねぇ……。ありふれたエピソードになりますが、それでもよろしければ」
わたしが頷くと、夏帆先輩は話し始める。
「まず両親は若い頃に2人で今の洋食屋を開いたそうです。当時はもう赤字続きだったとか。何度も何度もお店を畳もうとしましたが、それでも味を気に入ってくれる常連さんの手前、閉めれなかったそうです」
おそらく世間には同じような経験をしてきたお店も多いのだろう。どんなに味に自信があっても、最初はそういう道を辿るのが料理屋の登竜門なのかもしれない。
特に脱サラをしてラーメン屋を開く、なんて話は比較的よく聞く。
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