307: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/25(土) 18:35:53.83 ID:TuZ+rf/1O
しかしそんな様子は見られず、チラチラとわたしの方を見てきている。恋する乙女らしい仕草。
「申し訳ないんだけど、空いている時間が平日の18時30分から19時45分、もしくは21時以降しかないんだ。その2つだとどっちの方が都合良いかな?」
「早い時間で。あんまり遅い時間はダメだから」
「うん、わかった。じゃあ18時30分に……。わたしの部屋にする? この階の端だけど」
「そうして貰えると嬉しいかな。春宮さんの部屋は興味あるし」
「いや、何にもないけどね? まぁとりあえず了解。月曜日の18時15分には寮に戻って来れると思うから、その後に来てくれるのを待ってる」
「り」
「……? うん、ばいばい。今日はごめんね急に」
「いいって。女の子なら」
別れ際に彼女が言い残した一文字は、後になって調べてみると『りょうかい』という意味らしい。かなり短い挨拶用語だが、それすらも短縮してしまうとは…。
それも込みで、意外と話しやすい子だった。どうしてこれまで一言も話したことがなかったのか分からなくなるほどに。
ともあれ、雨宮綾香さんの退学はほぼ回避されたと言っても過言ではない。もともと彼女の学力は赤点候補組の中でもトップの学力だった。1週間も勉強すれば合格ラインには優に届くだろう。
それに加えてわたしの策もある。その策は今朝完成した。お披露目は8日後の日曜日。テスト前日となる。
あとは部活動組の勉強を見つつ、一之宮くんから放課後組の進捗を聞いて不足の事態があれば力を貸すくらいでなんとかなるだろう。
かなりスケジュールがカツカツになるかと思ったが、案外この1週間目で片がついた。
わたしはホッとしてケヤキモールへ入浴剤を買いに出かけるのだった。
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