【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】
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635: ◆FaqptSLluw[saga]
2022/11/30(水) 20:25:38.36 ID:tw0m1Ope0

「そろそろ来る時間じゃないか?」
「そうだな。……もう少し落ち着いたらどうだ?」
「……落ち着いてるって。アンタこそソワソワしてんじゃねーのか?」

 濡れ羽の烏色の尻尾が揺れる。こういう時の、こういう尻尾の揺れ方は――リョテイがワクワクしている時の揺れ方だ。

 何となくこういうイベント好きそうだもんな、と俺は内心で思いながらも、浮足立つリョテイをなだめる。


「リョテイは誰が来るのか聞いてるのか?」
「いや? むしろアンタこそ知らないのかよ、トレーナーの癖に」
「ほんとにな……なんで俺が知らないんだろうな」


 理事長も、俺に少しくらい教えてくれたっていいのに。

 この前理事長室に問い合わせた時に返ってきた「緘口ッ! 私は口を開かないッ!」という言葉を脳裏で反芻して、俺はため息を吐いた。

 なんでそこまで正体をかたくなに隠すのだろうか。訪れる人物が俺にとってよっぽど質の悪い誰かなのか……。

 あるいは、俺にとってよっぽど価値のある誰かなのか――。


「トレーナーさん、どうやら来たみたいですよ?」
「ん、来たか――」


 ナイスネイチャの声と共に腰を上げ、ノックを待つ。

 コンコンコン、と。規則正しい三回のノックが響き……その人物がトレーナー室へと入ってくる。

 その姿に、俺は思わず手に持っていたバインダーを落とす。

 ブルネットの髪に一閃の流星。アメジストの瞳は、俺がいつか見た時よりも少し濁って見えた。

 だが、その身にまとう雰囲気は紛れもなく、俺が知っている姿だ。何度も何度も、勇気を貰った姿だ。

 有馬で勝ったあの日、夏合宿で凹んでいたあの日、もうだめだと諦めて全てを投げ出そうとしたクリスマス。

 その姿が脳裏によぎるたびに、その声が響くたびに、俺は何度も彼女の名前をそらで呼んだ。


「――失礼します。今日からお世話になる、スペシャルウィークって言います!」


 夕陽のような、少しだけ陰のある笑顔で。

 彼女は――スペシャルウィークは、ほほ笑んだ。


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