【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】
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425: ◆FaqptSLluw[saga]
2021/12/06(月) 19:22:36.55 ID:vo5qICds0
「なぁトレーナー。次の目標レース、アタシが決めていいか?」


 控室に戻るなり、キンイロリョテイは俺に提案してきた。

 なるほどな、などと思いながら、まずはタオルを渡して髪を乾かすように促した。

 タオルを受け取り、髪をがしがしと拭いたリョテイは「聞いてくれるか?」と問う。


「サイレンススズカ、アイツはアタシにとって格上の存在だった。絶好のバ場状態、距離適性、レース場との相性――どれか一つでも欠けていれば、この勝利は危ういものだった」


 ……その通りだ、とは思う。

 リョテイにとって最上の状態とも言える状況を用意してもなお、サイレンススズカは食らいついてきた。その逃げ足の凄まじさたるや、リョテイが最終200mでつけた3バ身差のリードを、1バ身にまで縮めてくるほどだ。

 この逃げ足が十全であれば、リョテイでも危うかった。そう思わせるレース。


「サイレンススズカだって本気で挑んできた。どんな悪条件だろうと、な。だから、条件が良かったから勝ったなんて、本気で戦ったサイレンススズカを貶すことになる」
「ああ、言う通りだ。ただ、やっぱりアタシは思うんだよ、トレーナー」


 ……ああ、”やっぱりそうなるよな”。

 このレース場でリョテイが勝利したならば、こうなることはもう予測で来ていた。

 負けず嫌いだとか、浪漫が好きだとか、そう言うのもひっくるめて――。

 いや、それよりも。自分と戦ってくれた相手に対しての最上の敬意を、彼女はきっと表するんだろうな。

 だから、リョテイはきっとこうするだろうという確信が、俺には芽生えていた。

 ……つまり、彼女がやりたいこととは――。


「――天皇賞、秋か」
「――! へへ、流石はトレーナー。やっぱそう来なくっちゃな?」


 相手の土俵に上がる、ということ。

 サイレンススズカが次に出走すると目されている天皇賞秋への、出走。

 すべてフラットな状態で、鬩ぎあい、競い合い、一帖の楯を手にしたい。

 勝ちたい。


「……リョテイ、天皇賞に出るとなると、本当の本当に、100%のパフォーマンスを発揮したサイレンススズカとかちあうことになる。それでもいいのか?」
「むしろ願ったりかなったりだ、スズカが100%のパフォーマンスを出してくるなら、アタシはそれを上回るパフォーマンスを演出する! それだけの話だろ?」


 ここまで来たリョテイは梃子でも動くことはない。

 もうすでに一年近くの付き合いになっている。彼女がこういう時、絶対にひかないってことは理解してる。


「……いいよ。じゃあ、天皇賞秋、ね」


 そう告げればリョテイは小さく手を握り、ガッツポーズ。

 そのままソファに座ろうとするので、俺は慌ててリョテイをとどめた。


「おいおい、先にシャワー浴びて来いよ。風邪でも引いたら大変だ」
「……それもそうだな。じゃ、行ってくるよ」


 おう、と声を掛け、リョテイを見送る。


「にしても、サイレンススズカに天皇賞秋、か――」


 頭に浮かんだそれを、軽く頭を振って消し飛ばす。

 きっと、それは今関係ない話で。

 あるいは、そうであってほしいと思ったからだ。


 


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