【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】
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385: ◆FaqptSLluw[saga]
2021/11/12(金) 20:47:08.94 ID:AJS5orlD0

 まるで、神様が隠れて涙を流しているかのような、ひっそりとした雨が降る。

 五月にしてはやや寒い気温の東京競馬場は、出走するウマ娘たちの気迫も相まって重い雰囲気を醸し出していた。

 観客も知らず気迫に呑まれ、無駄口を叩くことなく席に座りパドックを見つめるのみ。そこにあるのは得体の知れない”静けさ”だけだった。

 鉛を溶かしたかのような雰囲気の中、ふと入り口付近から聞こえてきた声に観客のほとんどは気付いた。

 まるで花火のように華やかで、まるで剃刀のように鋭くて――まるで黄金のように眩い、その声に。


「重っ苦しい雰囲気だなぁー……。これが天下のGTなのか?」


 決して大きくはない声だった。だが、まるで凪いだ水面に小石を投げたかのように、波紋が――反応が広がっていく。

 視線が次々に声の許に動き、声の主に定められる。――当の本人は、そんなことを気にすることなく、ただただ自然体でそこにあった。


「なぁトレーナー、GTっていっつもこうなのか?」
「いつもこうってわけじゃないがなぁ。今日は特別静かだな」


 サイレンスズカだけに? と問えば、男は「やかましい」と答える。

 平常の域を出ない受け答えに、知らず観客は耳を傾けていた。


「リョテイ、結構な大舞台だけど緊張してないのか?」
「緊張? まぁしてないって言えばウソになるけどな」


 してるのか、と男は声を漏らし、観客も思う。

 誰しもが彼女のその在り方を自然のものだと捉えていた。そこに、緊張という心理的な隙は一切見受けられない。

 はは、と小さく笑いを漏らした彼女――キンイロリョテイは、炉端の小石を蹴飛ばして続ける。


「ヒトに見られる機会ってそうそうないじゃん? 緊張しないって奴はむしろ嘘吐きだぜ?」
「……まぁ、確かにそうだけど。だけど俺には、リョテイが抱いている緊張が悪い方向に働いているようには見えないんだよな」


 そりゃ当然、と息を巻いて、彼女は笑みを浮かべた。

 沈黙の日曜日を切り裂くような、輝かんばかりの笑み。

 全ての観客は、その笑みに思わず見惚れ、あるいは歓喜した。

 サイレンススズカ一強だと思われていたこのレースにおける、特異点。その出現に――。



「――一世一代の大勝負、緊張して負けましたじゃ通らねぇ。そうだろ?」


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