【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】
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273: ◆FaqptSLluw[saga]
2021/10/12(火) 02:21:03.35 ID:60cjC9k60
「論功行賞、ね」

 
 俺は小さく呟いて、思案する。

 確かに、ルナの齎した情報は絶大で、このループの真実にほど近い情報だと言える。

 普段ならば手放しで褒める、褒めるのだけれど……。


「なぁルナ、一つ聞いてもいいか?」
「何でも聞いてくれ、トレーナーくん」
「――俺は、君のことを覚えていない。忘れてしまっている以上、俺は君の知る俺ではない。……それでも、俺のことをトレーナーとして認めてくれるのか?」


 俺と、ルナを担当した俺はほぼ別人だと言ってもいい。

 同じ顔をしていて、声が同じで――でも、明確に違う。それが俺だ。

 そんな俺をルナは認めてくれていたと思う。だから俺は、トレーナーとしてルナに接し続けていた。

 だけど、ことここに至って、俺は結論を出した。明確に、彼女と二人三脚で歩んできた歴史を、俺自身の記憶を根拠に否定した。

 それでも俺を認めてくれるのであれば、この手の行く先が見つかる。だけど、認めてくれないのであれば――この手は空を切ることになる。


 俺は手を差し出した。この手を取るのであれば、君は俺のことを認めたという事になるし、払えば認めなかったという事になる。

 言葉には出さない。出さなくてもルナにはわかると信じている。


「……トレーナーくん」
「……なんだ?」
「君の問いに答えるのを失念していたね」


 たとえ10000年が経ったとしても、俺はマヤノを片時も忘れたりしないと思うし、会いたいよ。

 シンボリルドルフ――ルナ、君はどうなんだ?

 ……俺が彼女につきつけた言葉への、答え。

 はぐらかされてしまったが、確かに答えはもらっていなかった。

 静かにアメジストの瞳が揺れて……そして閉じられた。


「君の言う通りだよ。私は君と再び覇道を歩みたくて待った。例えそれは10000年が経とうとも変わらない鉄心石腸の心持ちだ」
「……じゃあ」
「記憶がなくても、私の知る君ではなくなっていても。――例え、君に想い人がいたとしても。私は君の担当ウマ娘でありたいと思うし、担当ウマ娘だと思っている」


 力強く手を握るルナ。静かに開かれた瞳は、いつもの優しげなもので。


「論功行賞、だったか」
「ああ。さて、トレーナーくんはどんなご褒美を私に与えてくれるのかな?」
「……ルナが知っている通り、俺には想い人がいる。だから、あんまり大それたことは出来ない。だから、これで許してくれ」


 手を解いて、それを彼女の頭に持っていく。

 さらさらと流れる絹糸のような感触に、傷をつけないようにゆっくりと、慎重に指を通す。

 小さく、ルナから声が漏れて。その声がどんなものなのかはわからないけれど。

 これで正解だったんだと、何故か思った。

 かつてルナの頭を撫でた時のような、こうあるべき感覚が俺の記憶をかき乱した。


(でも、俺が本当に好きなのはルナじゃない)


 こうあるべきではない。記憶のような何かを否定して、俺は今を選ぶ。

 本当に手に入れるべきものは何か、俺は既に知っているから。

 この記憶に呑まれるわけにはいかない。抗わなければならない。


(もともとの俺には悪いけど)


 それでも、俺は――。


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