【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】
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227: ◆FaqptSLluw[saga]
2021/10/03(日) 01:27:35.34 ID:hz0YCbH10


「……お、噂をすればってやつだな」


 リョテイがそう言って、目線を送る。俺もそちらに目線を送ると――そこには、鮮烈なマリンブルーの髪の毛を夕陽にたなびかせる、ツインターボの姿があった。

 なるほど、どうしてここまでリョテイが探し回っていたのか、ようやく理解できた。

 ツインターボ、俺が担当していた時もそうだが、かなり奔放なウマ娘だと言える。彼女がその時どの場所にいるかなんて、少なくとも俺たちの周辺でわかる者はいない。

 ……ナイスネイチャに聞けば、おおよその推測くらいは立つだろうが。

 思考という体のいい逃避に浸っていた俺は、しかしリョテイが背中を軽く叩く衝撃で現実に戻る。ツインターボは、今にでも建物の影に隠れようとしていた。


「ほら、行って来いよ」
「……本当にいいんだろうか」
「んなのわからねぇよ。でもな、トレーナー。担当トレーナーってのは、ウマ娘にとって――唯一無二の味方なんだぜ」


 アンタが悪意を持って接しようとしているわけじゃない以上、それはきっと、アイツらにとっては喜ばしい行為なんだって、アタシは思う。

 静かに、けれど力強くつぶやいたリョテイ。その言葉を噛み締めるのもつかの間、不意に俺の体はツインターボの視界の中へ躍り出る。

 何があったのかわからない。振り向けばサムズアップするリョテイ。……突き飛ばされたのだ、と理解した。

 その瞬間の出来事だった。前方にいたツインターボがこちらに気付いたようで、「あーっ!」と声を上げた。


「オマエ、あのレースの……!」


 蘇るあの時の記憶。走っていたツインターボに轢かれて気を失った後、こんな感じで声を掛けられたことがあったっけ。

 雲のように移ろいそうな思考を元に戻して、今何をすべきか――肝に銘じ、改めてツインターボをまっすぐ見据える。

 夕焼けに照らされた相貌は、突然こちらをまっすぐ見てきた俺に一瞬たじろぐ様子を鮮明に映し出した。

 ……やっぱり、俺の知るツインターボではない。俺が担当した彼女であれば、俺の顔にたじろいだりすることはない。

 ツインターボたちにとって、喜ばしい行為、か。


「……な、なんだよぅ。いきなりジッと見られると、ターボ、少し怖いよ」
「すまない。少し考え事をしていてね」
「へー。やっぱり会長が参加してるチームのトレーナーだから、いろいろ考えることがあるってことね」
「……そうとも限らないけどな」


 素直に君のことで悩んでいる、なんて言えないから。俺は彼女の邪推に乗っかってはぐらかす。

 ツインターボは純粋なウマ娘だ。俺が嘘をついてしまえば、カラスが黒になったりするかもしれない。

 その純真さを利用するようで、少しちくりと胸が痛んだ。


「それで、ターボに何か用か?」
「……」


 たった一言。たった一言"おはよう"と言うだけなのに、口が鉛のように重い。

 羞恥や躊躇いなんかじゃない、そんなものとは比較しようがない何か重大な意味がこの言葉には含まれているような気がして。

 世間話で誤魔化すのもアリだと思った。でも、そんなことをしてしまえば、(多少強引にではあるが)信じて送り出してくれたリョテイに合わせる顔がないのも事実で。

 乾く唇をかるく湿らせて、まずは小さく口だけ開く。……問題ない、話すことは出来そうだ。

 声が出るか、小さく声を出す。……こちらも問題ない、声を出すことも出来そうだ。

 自分の意思の薄弱さが、余りに露骨に出てしまう。ありあわせの勇気の大半は、リョテイから受け取ったものだった。

 でも、それでいいとも思えた。俺はきっと、彼女たちの力を借りなければ、この世界でちっぽけに生きることしかできないのだから。

 正しい選択なのだろう、と。薄弱な意思とは裏腹に、確信できた。


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