12: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:21:23.77 ID:UdHDSlcF0
そんな中、一人の男性が近寄ってきて頭を下げた。
「今回もお世話になりました。可奈もお疲れ・・・?」
反応的に765プロの関係者、おそらくプロデューサーだろうか。彼もその場の空気の重さに気が付いたらしく言葉が途切れた。そう思ったとき、可奈ちゃんが彼の手を引いた。
13: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:23:22.95 ID:UdHDSlcF0
「先ほどは失礼しました。以前うちの矢吹がお世話になったようで。ほら、可奈」
どこまで説明したかは分からない。だけど私たちの関係性は把握したらしい。私に向かって頭を下げたプロデューサーが可奈ちゃんに何かを促す。
「あ、あの! 先生、これを!」
14: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:25:17.67 ID:UdHDSlcF0
「おや羨ましいね。僕は招待してもらえないのかい」
回答に困る私を見て話を繋ぐためだろうか。オーナーが悪戯顔で入り込んできた。
「あ、オーナーさんごめんなさい! え、えっとプロデューサーさん!」
15: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:27:29.78 ID:UdHDSlcF0
「ははは。慌ただしいね。それで君たちはどういう関係なんだい?」
笑いながらオーナーに尋ねられる。
「実は昔、私の合唱教室に来てたんですけど向いてないってやめさせてしまったんです」
16: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:29:36.08 ID:UdHDSlcF0
「さてここまでライブを見てみてどうだい?」
結局私はオーナーと一緒に可奈ちゃんのライブを見に来ていた。
「やっぱり来るべきではなかった、そう思います」
17: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:36:37.35 ID:UdHDSlcF0
「最後までは聞いていきますが、二度と彼女の視界に入らないように気を付けます」
『Clover Days』という曲を仲間と一緒に歌う姿で共に笑って歩いていける仲間も見せてもらえた。今更私なんて彼女の道に必要ない。
いや、そもそも私が必要だった時なんてなかったのかもしれない。
18: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:42:17.18 ID:UdHDSlcF0
「さて次が最後の曲なんだけど」
しばらくトークを行った後、ピアノの子、確か恵美ちゃんが話をまとめて次の曲の入る気配を見せるけれど何かあるらしい。
「本当だったら私たち3人の曲なんですけど。今回、私のわがままで一人で歌わせてもらいます!」
19: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:46:39.97 ID:UdHDSlcF0
以前ライブハウスで聞いた『パンとフィルム』よりも切なく恋を歌ったその曲。
まだ幼さが残る彼女らしくない感情が込められたその歌はまるで彼女が本当に恋をしてきたようで。
誰に? 同級生? プロデューサー? いや
20: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:52:08.50 ID:UdHDSlcF0
私は彼女にもバンドにも最後まで向き合えなかったし、代わりに抱きしめようとすることもできなかった。その思いが胸に突き刺さる。
それでも目を逸らさず最後まで聞くのがせめてもの私の贖罪。
そう考えていた時に可奈ちゃんがこちらを向いた。
21: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:57:24.93 ID:UdHDSlcF0
「あっ」
そうだ。最近夢で何度も思い返す彼女の歌。
―スマイルンルン〜♪ らんらららーん〜♪ 笑顔に〜なって〜♪―
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