鎮守府生まれの提督さん
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11: ◆CrAv5R2gC.[saga]
2021/08/14(土) 02:11:00.09 ID:CDV7hUAW0
「……で、どうなりましたか?」

「どうもこうも……念のため巡回して問題がなかったから帰ってきただけだよ」

あれからTは念のため近海を周り、完全に消滅したことを確認して帰ってきたのだった。
あまりのあっけなさに最初は面食らっていた中将たちだったが、帰艦するころには何度も頭を下げられた。

「とくに吹雪…被害者な。彼女に関しては目が合うたびにお礼を言われたよ。夕食もご馳走になってきたんだが、お酌してくれてな」

「で、そのまま泊まらせてもらって帰ってきたと」

「言ったじゃないか。明日までに帰ってくるって……何か問題でも?」

現在Tは報告書をまとめながら秘書官の横槍を受け流していた。昼に帰ってきて以降ずっと眉間にしわを寄せている。

こうなった彼女は少し面倒なことをTは重々知っていた。
いわゆる初期艦であった彼女――大井は、仕事に関しては優秀だが少々生真面目なところがある。
どんなに些細なことでも、改善点は即座指摘し正す。Tにとっては慣れたものだが、だからと言って扱いが上手いわけではなく、受け流し方が身についただけであった。

「もしかして一人で寂しかったのか?」

「なに言ってるんですか……手が止まってますよ」

半笑いで尋ねたが真顔で返されるT。返答の速度に苦笑していると大井からまたもや鋭い言葉が飛んできた。

「はいよ……まぁ、たしかに昨日はお前ひとりだったもんな」

手を動かしつつ、Tはここ1か月のことを思い返していた。

Tを入れて5人という少人数で運営している一方で、大井が一人になることは意外にも珍しいことだった。

「……今回は皆さん遠い先での任務ですからね」

言葉につられ、大井も昨夜の孤独をしみじみと思い出していた。

「一度運営を見直さないといけないかもしれないな……」

またすべきことが増え、Tはため息を吐いた。
それに呼応すように何かを思い出したのか、大井は書類を持ってTに近づいてきた。

「……実はですね。昨夜に新たな任務が…」

「……はぁ」

仕方ないとはいえ5人でこれを捌ききれるのだろうか。
今度また上官に人材補充をお願いしてみよう。Tは決意して依頼書に目を通し始めたのだった。


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