水谷香月「頑張れ、里山。私がついてるぞ」里山活樹「ああ」
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5:名無しNIPPER[sage saga]
2021/07/22(木) 00:13:09.82 ID:QC2+Cl8EO
「このっ……倒れ、ろっ!」

ドッ! ゴッ! バンッ!

コンビネーションで仕留めにかかるも、彼は倒れない。そして私は気づいた。間合いだ。
いつの間にか、ここは彼の間合いの内側で。

「はっ……はっ……はっ……」

攻めている筈の自分が追い詰められている。
この感覚には覚えがある。格上の対戦相手。
どんなに小手先で勝負しようとしても、ボクシングには絶対に埋められない距離がある。

「あ……あ、あ……」

負けると思った。里山には勝てないと悟る。
それは性別がどうとか、技量がどうとか、そんな問題ではなく、単純に自然の掟である。

弱肉強食。弱者の肉を強者が食う。
私は獲物で、里山は捕食者だった。
もし彼がアッパーの打ち方を習ってたなら。

「……勝った」

意識を失った相手に胸を貸して支えてやったのは里山のほうだっただろう。私は勝った。
立ち直れない恐怖と、彼に罪悪感を抱いて。

「勝ってごめんね……里山」

勝利を嬉しいと思えなかったのは初めてだ。


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