【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」スペ「2スレ目です!」【安価】
1- 20
285: ◆FaqptSLluw[sage saga]
2021/08/07(土) 16:48:57.90 ID:LizPTLal0
 そして、事実――マヤノトップガンは、今の彼女に勝つことは出来ない。

 ヒトより鋭敏な感覚を持つウマ娘であれば、そんなことわかり切っているはず。だが、マヤノは――いつもの理解力をここで発揮せず、ただただナリタブライアンに突っかかっていた。


「……何度やっても同じだ」
「次は勝つもん」


 ふっ、と。ナリタブライアンの口から嘲笑の息が漏れる。

 そんな無様な様子でよくもまぁ、とでも言いたげな表情。マヤノは、その表情を向けられて――ただただ悔しそうな表情を浮かべていた。

 ゲートにはいれば、ナリタブライアンはマヤノの方を見て、今一度笑みを浮かべる。


「10秒やる」
「――ッ!」


 明らかに自身のことを下に見ている――明け透けな言葉にマヤノは一瞬鼻白んだ。

 そして――次に浮んだ表情は、明らかな、とても明らかな怒りだった。

 ゲートが切られる。凄まじい勢いで駆け出すマヤノ。

 1秒、3秒、5秒。ナリタブライアンは腕を組んでいる。

 7秒、9秒。マヤノは駆けていく。もはや絶望的な開き。

――10秒。ナリタブライアンはゲートから”消えた”。

 爆発的な加速を見せたナリタブライアンは、逃げるマヤノとの差を潰しながら駆けていく。どれだけの差が開いていても、絶対に詰められるという自信があり――それを為しうるだけの能力を持っていると確信しているがゆえに。

 その表情は、いつもと変わらない。

 平坦で。でも何かに飢えているような。

 寂しそうな。

 ……その表情は、諦めのように見えた。

 此処に居る。誰か、この渇きを癒してくれ。闘争に価値を与えてくれ。

 狂戦士のような心は、しかし誰にも理解されず、孤高。

 もしかしたら、そんな心を理解できたのはマヤノを含めたほんの数人だったのかもしれない。そんな理解者が――濁ってしまっている。


「……怒ってる、のか?」


 ナリタブライアンの表情はそうは見えない。どれだけ見たって、涼し気で、しかし絶対に獲物を食い散らかす猛禽のそれでしかない。

 ただ、直感が囁く。ナリタブライアンは、怒っている。

 マヤノとの差が詰まっていくたびに、直感は確信へと変わっていく。ついにナリタブライアンがマヤノを抜き去った時、一瞬だけ――ナリタブライアンは歯噛みした。

 悔しさを、怒りを押しとどめるように。

 こうなってしまえば、マヤノに勝ち目はない。ナリタブライアンに抜き去られたマヤノは今にも泣きそうな表情を浮かべて、ゴールするナリタブライアンを見つめることしかできない。

 模擬レース場には、夜の闇よりもなお深い影が、落ちていた。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/577.61 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice