【ウマ娘】エアグルーヴ「たわけがッ! 今日が何の日か知らんとは……」
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7: ◆FaqptSLluw[sage saga]
2021/07/16(金) 01:29:31.22 ID:YZ47s4oM0

「お前なぁ、これから笠松に帰るっていうのに……ちょっとは緊張したりしないのか?」
「どうして緊張する必要がある? 私は故郷に帰るだけだぞ」
「オーケイ、錦を飾るって言葉をお嬢さんはどうやら甘く見ているようだ」


 あと2日もすれば新年だ。

 トゥインクル・シリーズも無事に乗り越え、あとは寂しく新年を迎えるだけだと思っていたが、そんなときにオグリから帰省に誘われた。

 ただ一つ、通常の帰省と違うところがあるとすれば、それは俺たちがつい先日行われた有馬記念の勝者である、という事だ。


「今日の夕食を賭けてもいい。笠松のみんなは絶対オグリのことを大仰に迎えるはずだ……!」
「みんなはいつも応援してくれるが、無理はしなくていいと伝えている。昼間に行くわけだし、そんな大げさな準備は……」
「していない、と言いきれるか? 有馬記念の時だって、あんなに笠松の人たちは来ていたのに?」


 ぐぬ、とオグリは口ごもる。どうやら疑わしくなってきたようだ。

 オグリを応援してくれている方々――その中で最も熱狂的で真摯なファンは、間違いなく地元・笠松の人たちだ。

 そんな素晴らしいファンたちだからこそ、結果がどうなるかなんて解り切ったことだった。

 
「トレーナー、今からでも遅くない……! 笠松のみんなが出迎えをしていない方に夕食を賭けるんだ……!」
「どうして負けることが確定している賭けに乗っからなきゃいけないんだよ……。やだよ……」
「これでは、私の夕食が……」


 がっくりとうなだれるオグリ。


「……オグリお前、まだ食うつもりか」
「当然だ。医食同源、食べることは健康に繋がると教えられた」
「シンボリルドルフ……やってくれたなぁ……ッ! だいたいオグリ、お前太ったら来年のレース出れなくなるぞ! ほれほっぺだって……!」
「いはいお、ほれーはー!」
「いつも通りだ――」
「――ッ。体型意地に余念はない!」
「うるさい、人の金で食う飯はうまいか?!」
「うまい!」
「だろうな!!」


 餅みたいなほっぺたを引っ張り、オグリは引っ張る俺の手を放そうとする。

 だが離れない。

 ……ウマ娘の力をもってすれば簡単にはがせるので、これもスキンシップの一つだと認識しているのだろうが――俺にとっては懐事情に直結する有事である。

 唯一の救いは、これも経費として落とせることだろうか。さすがに上限はあるので、三割程度は自費負担だろうが……。


「トレーナー! あれを見てみろ!」
「なんだいきなり……。ふむ、”弁当の日限定、飛騨牛丼”……ってお前まさか」
「トレーナー、今からトレーナーのことを揺すったら金が出てきたりしないか?」
「お前は俺のことを、金のなる木か何かだと思ってないか?」
「……オ、オモッテナイゾ」
「こりゃ思ってる顔だ……」


 はぁ、と息を吐くが、これもまぁ冗談で。


「勿論嘘だ。トレーナーは私にとって、一番大事な人だからな!」
「――。お前、それ他の誰にも言うなよ……?」
「何故だ? そもそも一番大事な人はトレーナー以外に居ないだろう。言う機会もない」
「それでもだ!」


 妙なところでこんな言葉が飛び出してくるから、放っておけない。

 やっぱり愛くるしいウマ娘なんだ、オグリキャップというウマ娘は。

 だから愛されるし、俺もこれからこいつを愛していくんだと思う。


「オグリ、来年もよろしくな」
「ああ……! こちらこそよろしく頼む」


――美味しいご飯も!


 続けられたオグリキャップの言葉に、思わずずっこけた。



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