1:名無しNIPPER
2021/07/07(水) 06:13:11.57 ID:aRwz879j0
お母さんに聞いたことがある。
ねえ、お母さん。?―十二時を過ぎたシンデレラはもう、魔法に掛けてもらえないの?
短いわたしの髪を梳いていた片手を止めて。ふわふわと柔らかな布団をお母さんは肩まで被せてくれた。早く寝てしまいなさい、と言葉にはしないで込めた意味を悟らずにわたしはもう一度問う。お母さん、もう魔法は無くなっちゃったの? 絵本を読み聞かせていたお母さんはわたしの頭をやさしく撫でてから笑った。
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2:名無しNIPPER
2021/07/07(水) 06:13:51.29 ID:aRwz879jo
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3:名無しNIPPER
2021/07/07(水) 06:15:08.13 ID:aRwz879jo
その先の言葉はあやふやにしか覚えていない。たぶん、わたしにとってどうでもよかったのだろう。あるいは、幼少の記憶だから過ぎてしまったのかどちらか。どっちもかもしれない。忘れちゃったけど。
十何年前の記憶だろう。本当に、本当に昔のことだ。
うんとあの頃より大きくなった背を張るように伸びをする。
ぽきぽき、と固まった筋肉が解れる音。しゃらり、同じ重たいレースたちが行き場を無くして地面に落ちる音、音。さざめき、水の音。空の音。鳥の音。夕暮れの人達の音。わたしを見て怪訝そうにする人の、音。
4:名無しNIPPER
2021/07/07(水) 06:15:36.82 ID:aRwz879jo
「――凛ちゃん、疲れてない?」
わたしはなんでここに来ているのだろう。
ツーストロークのエンジン音が耳の奥でこだまする。
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