786: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/16(日) 00:03:12.68 ID:PU+Tw3fzo
第一〇学区の少年院の近くにある路地裏。
番外個体は一人の男の首を掴んで体ごと持ち上げていた。
その男は砂皿緻密。暗部組織『スクール』に所属している雇われのスナイパーだ。
だらりと力なく腕を下げていることから、もう体を動かすような力を出すことが出来ないことを表していた。
番外個体「……はぁ、つまんないの」
ため息をついてから、番外個体は手に持った砂皿を投げ飛ばした。
ビルの壁に叩きつけられた砂皿は口から血が混じった息を吐いて、そのまま地面に落ちる。
番外個体「まあスナイパーだし、接近戦は本業じゃないからしょうがないとは思うけど、もうちょっと楽しめると思ったんだけどなー」
ケラケラと笑う番外個体。
地面に横たわる砂皿はそれを横目に、
砂皿「殺せ」
番外個体「漫画とかでよく見る『くっ、殺せ』ってヤツじゃん。リアルで言ってる人初めて見たよ。言ったのはかわいい女騎士サマじゃなくてむさ苦しいオッサンだけど」
適当なことを言いながら、番外個体は腰に付いたポーチを開ける。
その中から、鉄釘を一本取り出す。
番外個体「ま、安心してくれていいよ。そんなこと言われなくてもちゃーんと殺してあげるからさー」
鉄釘をぺろりと舐めてから、それを指に挟んで砂皿へ向ける。
バチバチッ、と番外個体の指先に電気が走った。
番外個体「とりあえず礼は言っといてあげるよ。例の『オモチャ』のテストに付き合ってくれたんだからね。その代わりと言っては何だけど、これ以上苦しまないように一瞬で終わらせてあげるよ」
砂皿の頭部へと狙いを定める。
番外個体が放つのは能力を用いて鉄釘を磁力で飛ばす音速弾。威力は砂皿が使っていたライフルと大差ない。
こんな一メートルもない至近距離で頭蓋へ直撃すれば脳みそごと吹き飛ぶ。まさしく、痛みを感じることなく。
番外個体「じゃ、サヨナラ。スクールのスナイパーさ――」
ダッ、と番外個体は何かが駆け寄ってくるような気配を感じた。
路地の曲がり角の向こう側からアスファルトを蹴る足音が聞こえる。
番外個体(なんだ? こんな時間からこんな場所でジョギングなんてする酔狂な人は、この街には居ないと思うけど)
番外個体は意識を砂皿からその気配の元へと切り替えた。
首だけ動かして路地の曲がり角を見た。足音が大きくなってくる。
そして、その気配は現れた。
番外個体「なっ……ッ!?」
番外個体は顔をギョっとさせた。
その気配の主は女だった。金髪碧眼で足元に転がっている砂皿緻密よりも高そうな長身。
学園都市ではあまり見ないような成人した西洋人女性だった。
しかし、番外個体が驚いたのはそこじゃない。
彼女の手に黒光りしたものが握られていた。軍用のアサルトライフル。
全長一メートル近い機関銃をこちらへ構えて、引き金に指をかけ、挨拶代わりに発射しようとしてきているからだ。
狭い路地裏で――。
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