結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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781: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/15(土) 23:57:35.10 ID:2z6G7I5Go


 ピピピピッ、そう思った垣根の携帯端末が音を鳴る。
 その番号は心理定規(メジャーハート)こと獄彩海美が使っている端末の番号だった。
 垣根は首をかしげる。今はスクール内の端末で常に会議モードにしており、誰とでもいつでも会話できるようになっている。
 ただの状況報告だけなら、わざわざ電話をかけてくる必要はない。
 疑問に思いながらも垣根は通話に応じた。


垣根「どうした? そっちの状況はどうなっている?」

海美『…………、かき、ね……?』


 電話口からは海美の声が聞こえた。
 しかしその声は、いつもの彼女の声ではなく、震えていて、か細い感じだった。


垣根「あん? どうしたんだよその声は?」

海美『……ご、ごめん、なさい。わた、したちはし、っぱいよ』

垣根「失敗? 座標移動を取り逃したっつうことか?」

海美『わ、たしたちは、もう、だめ、だから。かきね、はや、くてったい、し、て……?』


 海美の声が言葉を発する度に小さくなっていくような気がした。
 まるでチカチカと点滅して明かりを弱めていく、切れかけの電球のように。


垣根「何言ってんだよテメェ! 俺の質問に答えやがれコラ!」

海美『わたし、ね……あなたに、いっておき、たいことが、ある、の』


 垣根の言葉を無視して、海美は話を続けていく。


海美『あな、たって、ほんと、がき、っぽい、とか……ばか、っぽいとか、さんざん、いってきた、けど』


 最後の力を振り絞るように、


海美『やっぱり、わたしは、あなたのことが――』


 海美の言葉は最後まで聞こえなかった。
 ガシャン、という機器が粉砕されたような音を上げて、通話が終了したからだ。
 彼女の持っている携帯端末が、彼女の身に何かあったのだろう。


垣根「…………」


 垣根はディスプレイに映る通話終了の文字を見て考える。
 暗部にいて殺されるのなんて当たり前のことだ。
 本当にあっさり死ぬ。下部組織の下っ端共はもちろん、同じ正規の構成員だったとしても。
 半年くらい前には正規の構成員として少女が一人いた。無能力者ながら暗殺を得意とする優秀なスナイパーだった。
 そいつはあっさりと死んでしまった。ちょっとした暗部間の小競り合いで、無様に爆殺されて。
 だから、今回の任務で誰かが死ぬなんてことも当たり前のように起こることだろう。
 それは獄彩海美という少女であっても同じことだ。そう、同じこと――。





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