2:名無しNIPPER[saga]
2021/07/03(土) 23:17:53.90 ID:jGqu1IYDO
「ね、何?」
再度問い返されても、僕の硬直が解けることはなかった。というか、僕は彼女のことを知っているからこそ驚けるし、一方で彼女は僕のことなんて知るはずもない。知っていたなら、むしろそっちの方が驚きだ。
勝利の女神、アテーナーなど、彼女を評する言葉は多数あるし、彼女のことを知らない日本人はそう多くはないだろう。いるとしたら、よっぽどテレビやインターネットから隔離されている奇異な人くらいだ。少なくとも、僕の同級生で彼女のことを知らなそうな人は誰も思い当たらない。
僕だって、本人を目の前にしたのはこれが初めてだ。テレビでも彼女の美しさを褒めたたえることはよくあるが、いざ本人を目の前にしたらそれがより一層強く感じられた。子どもの頃に憧れていた近所のお姉さんの茉奈ちゃんだって、学年のマドンナと評されている坂本美夏だって、彼女を目の前にしたら霞んでしまうことだろう。これが有名人のオーラってものなのかもしれない。
「えっと……これから小説を賞に応募しようと思って、最後の神頼みに」
「小説書いてるの? えーっと、何くんかな」
どうやら、僕のことを知っていて声をかけていたわけではないらしい。そりゃそうだ、今まで何の繋がりもなかったはずなんだから。
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