44:名無しNIPPER
2021/06/24(木) 00:10:40.33 ID:I9OmqLYR0
図書室には風が吹いた。夕焼けに全て溶けた昨日の涼しい風とは違う、とても暖かい風が。
風は、俺が誰にも知られたくなくて、自分自身にも知られたくなくて
必死に、必死に隠した心の在りかを馬鹿にして笑うみたいに、いとも簡単に通り過ぎて行った。
俺が彼女に心を惹かれていた理由が今なら分かる気がした。
多分俺たちは正反対にいる人間なのだ。
彼女が雲一つない快晴なら俺は土砂降りの豪雨。
彼女がハッピーエンドなら俺はバットエンド。
色なら彼女はオレンジ色で俺は水色。
だから俺は彼女に強く憧れていた。俺が持っていない、俺が要らないからと言って切り捨てたその全てを持っていた。
そんな彼女に憧れて、羨ましくて、愛しくて仕方がなかったのだと、俺にはどうしようもなく思えた。
自分自身にすら嘘をつくのはもう辞めようと思えた。飾らない言葉で表そう。
俺は彼女の事が好きだった。この気持ちが恋でないなら辞書に恋と言う言葉は無いと言えるぐらいに。
86Res/49.19 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20