【安価・コンマ】「ゼロウス?」【オリジナル超能力ものディストピアSF】
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110: ◆te6Chm3tjE[saga]
2021/06/25(金) 01:27:20.79 ID:qZdftSUx0
「それなら、遠慮なく殴らせて貰うぜ……!」
「ええ」

ブランカは俺が拳を振り上げて下げ、勢いをつけて頬に近づけても怖がらなかった。
全く目をそらさない。本当に殴られる覚悟をしていたのだろう。
俺が寸止めしても、ブランカは震えなかった。

「殴らないのですか?」
「ブランカこそ、怖がらないんだな」
「ゼロになって家族を失う痛みも怒りも、わたくしにも分かりますから」
「それをさっきまで言わなかったあたり、ブランカの性格は分かった」

家族が死んだばかりだ。理性は納得できないが切り替えなければならないことがある。
ブランカを殴っても、死んだ家族が帰ってくる訳ではない。
よく見ると僅かに露出したブランカの肌には、あちこちに拳の跡のような痣ができている。
今まで仲間が加入されるたびに同じことを繰り返してきたのだろうか。
それを見て俺の怒りは次第に収まっていき、最後には悲しみだけが残った。

「今日は訓練どころじゃねえから、1日時間をくれ。明日には切り替える」
「分かったわ、部屋は用意してるから行ってらっしゃい」

ディエスも察してくれたのだろう、気を利かせてくれた。
ロホもブランカも、俺を引き止めない。
扉を閉めると、静かに用意された自室に向かった。
俺はその夜、声を押し殺すことなく泣いた―――。


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