4: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/06/12(土) 17:05:17.84 ID:Rn+1RG8T0
ずしん、ずしんと大地が揺れる。
その大きな城が一歩を踏み出すたびに木々の葉がザワザワと色めき立ち、驚いた鳥たちが忙しなく飛び立つ。お城のてっぺんに生えた煙突からは白い煙がモクモクと上がっている。深緑の木々が白い煙の輪郭を際立たせる。
「今日はこのあたりでステイしましょうか」
窓から外の様子を伺っていた少女がそう呟くと、お城の正面にある大扉が口のようにパカッと開いて、蒸気をボワッと吐き出した。脚のように伸びていた柱がガチャガチャと音を立てながら畳まれていき、鏡面のような湖の横の草原にゆっくりと腰を下ろした。
「あっ、もう少しレイク側を向いてもらえるとグッドです。うん、うんオーケーです。それじゃあ、あと二日もあればライブステージですから、ゆっくりスリープしてくださいね、ゲキコ」
ロコは城に優しく声を掛けた後、踵を返して部屋の中央に置かれた時計と地図を交互に見たり、再び外を見たかと思えば望遠鏡で何かを探したり、忙しなく働いていた。
みるみるうちに日が落ちていき、街から遠く離れた山の中は真っ暗。漆黒の森の影は空との境界を明るく際立たせていた。そんな中、月明かりに照らされた湖面の形や、森の陰から漏れる遠くの街の光を頼りに、ロコは現在位置を確認していた。
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