【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」【安価】
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715:いぬ ◆FaqptSLluw[sage saga]
2021/07/10(土) 23:52:49.72 ID:ya4cvXhh0
(……強い)


 マヤノトップガンは、周囲を冷静に観察し、適切なコースを取っていた。

 ちら、と後ろを見ればナイスネイチャも観察眼を巡らせ、適切な位置についている。

 スリップストリーム分、あちらの方が少しだけスタミナを保ちやすいか、とマヤノトップガンは内心で分析結果をごちる。

 作戦から考えるなら、マヤノトップガンの旗色は僅かに悪い。マヤノトップガンはオールラウンダーで、差しもある程度は熟せるが――ナイスネイチャのそれは天性の素質に、さらに磨きをかけたものだ。

 これは挑戦であるともいえるし、敬意であるとも言えた。逃げたほうが確実にいい勝負になることは間違いない。だが――何故か、ナイスネイチャに対する闘志がそうさせた。

 正解か、不正解か――。それはマヤノトップガンにはわからない。まして誰にも。

 だが、こうしてよかったんだ、と。体に受ける風に心地よさを感じて、強くそう思う。

 擦り減るスタミナ。並み居るウマ娘たちはその誰もが強者で、無用に焦りそうになってしまう。でも、そうはならない。……そう、なってはいけない。

 たった一つの強い意思が、マヤノトップガンの強靭なまでに安定した精神を支える。即ち――。


(勝ちたい――!)


 勝利の意思。ナイスネイチャに勝ちたい。トレーナーに勝利を贈りたい。

 自分が好きな走り方で、輝きたい――。

 願いは形となり、祈りは強さとなる――そして、意志は結果を齎す。

 第四コーナーを回り、ぐんぐんと加速する。声や音を置き去りに、体は貪欲に勝利を求めて前に出る。

 ふと、鋭い踏み込みが耳朶に届き、マヤノトップガンは振り返る。そこには朝焼けのような鋭くも見るものを魅了する踏み込みで加速するナイスネイチャの姿があった。


(――来た!)


 確信めいた予感がマヤノトップガンを襲う。

 負けられない勝負の時間が、きっと今だ――と。回転数を上げる。脈動を轟かせる。

 たったそれだけで世界が変わる。色鮮やかだったターフが一気に色褪せて、その瞳にはナイスネイチャしか映らない。

 一瞬で肩を並べてきたナイスネイチャ。前傾姿勢を取り、風の抵抗を下げたうえで――足の回転数を上げる。

 以前はこんな走り方をしていなかった。ドキドキが、ワクワクが――ナイスネイチャから痛いほどに伝わってきて、マヤノトップガンも脚を強く踏み込んで、大きく飛ぶように走る。


「……は、は。お嬢さん、随分と派手な走り方をされますね――ッ!」
「ネイチャちゃんこそ……! 見ない内に、すっごい走り方をしちゃって……!」
「負けませんよ、何せ――トレーナーさんが待ってくれてますんで……ねッ!」
「マヤも、負けないよ……!」


 風を抜き去る、光のような加速。

 最終直線に入り、輝くような二人の競り合いは、観客を大いに沸かせた。

 そう、だからこそ訪れ得る”それ”が始まった時、観客は落胆の息を漏らすことはない。

 何故なら、それはこのレースを見に来た観客にとって、決まりきった”事実”であったからだ。

 


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