【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」【安価】
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334:いぬ ◆FaqptSLluw[sage saga]
2021/06/24(木) 01:05:08.75 ID:LigUgtZx0
「――マヤノが今、一番欲しいもの、なーんだ」

 ……自分で言っておいてなんだが、お前正気か?!

 いや、狂気の沙汰ほど面白い! 狂気をまとった質問であればあるほどマヤノはたじろぐはずだ。その隙にコーヒーをがぶ飲みする!

 手に取る。口に運ぶ、流し込む――ッ! この間およそ0.5秒! わーおカミカゼ!

 さて、クイズの答えを言おうとしていたらコーヒーを奪われてしまったマヤノさんは――。


「一番欲しいもの……」


 ……? 随分と真剣に悩んでいるようだ。

 他愛のない質問だと思ったが、実はそうでもなかったのだろうか。彼女にとっては重大な質問だったとか?

 カフェインで胃が痛みだす予感を感じながら、マヤノの方をじっと見る。背中越しにではあるが、酷く悩んでいる様子だ。


「ま、マヤノ……?」
「んー……」


 何かをぽつりとつぶやいたマヤノ。ふと、彼女の尻尾の動きが止まる。

 何か起きる――と思った瞬間にはもう遅かった。

 マヤノが立ち上がり、隣に立った――かと思うと、素早い身のこなしで俺を椅子から引っぺがす。やがて、えい、と可愛らしい掛け声が響けば――俺は軽い浮遊感を感じる。

 何が起こったのか理解した時には――俺は床に優しく押し倒されていた。


「クイズです」


 小さくつぶやき、マヤノの黄金色の目が細くなる。弓なりに笑顔を浮かべるマヤノはとてもきれいで、可愛らしくて――。


「マヤが一番欲しいものものは……誰でしょう?」


 ああ、それはもう答えのようなものだろう。近づくマヤノの顔に、せめてもの抵抗で顔を横に逸らす。腕はもう組み敷かれていて動かせそうにないし、体も同様だ。

 唇が振れそうになる。呼吸と体温が混ざり――そして。


「なーんて、ね☆」
「……へ?」
「もー、トレーナーちゃんったら反応が可愛すぎるよー! マヤ、思わずいしゅがえし? しちゃった〜」


 大丈夫? と声をかけられていきなり起こされる。

 突然のことに、突然の言葉に俺が驚いていると、マヤノは小悪魔のような笑みを浮かべて、次いでターンし俺に背を向けた。

 背中越しに、声が響く。


「おかえしだもんねー。マヤちんのことを騙そうだなんて、40ノットはやいよ、トレーナーちゃん!」


 いつも通りの声音――だったと思う。いつも通りの、穏やかで、でもどこか諧謔を弄するような声音だったと思う。……でも、何故かその時のマヤの声だけは違っているような気がして。

 そんな物思いのせいで、マヤノの最後の言葉は、右から左へとすり抜けていったのだ。


「――正解は言わなくてもわかるよね、トレーナーちゃん」

(了)



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